「従業員が増えてきたけれど、産業医はいつから必要なの?」「うちのような小さな会社にも産業医の義務はあるの?」。人事や総務を一人で担っている方から、よく聞かれる疑問です。
産業医の義務は、労働安全衛生法で決められています。常時50人以上の労働者を使用する事業場は、50人に達した日から14日以内に産業医を選任する義務があり、怠ると罰則の対象になります。一方、50人未満の事業場には選任義務はありませんが、何もしなくてよいわけではありません。2025年の法改正で50人未満に義務化されたのはストレスチェック(2028年4月1日施行)で、産業医の選任義務の線引きは50人のまま変わっていません。
この記事では、e-Gov法令検索で確認した条文と厚生労働省・労働局の情報をもとに、産業医の義務の範囲、選任の手順、産業医がいない会社の備え方を、実務の順番に整理しました。
この記事でわかること
- 産業医の義務がある会社の条件と「50人」の数え方
- 産業医の選任はいつまでに、どんな手順で行うか
- 選任産業医の職務と、会社が産業医に対して負う義務
- 産業医を選任しないときの罰則とリスク
- 産業医がいない会社(50人未満)がとれる対応
産業医の義務とは?選任が必要な会社の条件
まずは、産業医がどんな役割の医師で、どんな会社に選任の義務があるのかを確認します。義務かどうかは「会社の規模」ではなく「事業場の人数」で決まる点がポイントです。
産業医とは
産業医は、働く人の健康管理について、医学の専門的な立場から会社に助言や指導をする医師です。病気を治療する主治医とは役割が異なり、健康診断の結果の確認、長時間労働者やストレスの高い人との面接、職場の巡視などを通じて、働く人が健康を損なわないように会社を支えます。
医師であれば誰でもなれるわけではありません。労働安全衛生規則で、厚生労働大臣が指定する研修を修了した人(日本医師会の認定産業医など)、労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)に合格した人など、一定の要件を満たした医師に限られています。
常時50人以上の事業場に産業医の選任義務がある
労働安全衛生法第13条は、政令で定める規模の事業場ごとに、医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理などを行わせなければならないと定めています。その規模は、労働安全衛生法施行令第5条で常時50人以上の労働者を使用する事業場とされています。
つまり、50人以上の事業場を持つ会社は、業種に関係なく産業医の選任が義務です。オフィスワーク中心の会社でも例外はありません。
50人は「事業場」ごとに数え、パート・アルバイトも含む
人数は会社全体ではなく、本社、支店、工場、店舗といった事業場ごとに数えます。たとえば従業員80人の会社でも、本社45人・営業所35人に分かれていれば、どちらの事業場も50人未満なので選任義務はありません。反対に、本社だけで50人を超えていれば、本社に産業医が必要です。
「常時使用する労働者」には、正社員だけでなく、継続して雇っているパートやアルバイト、契約社員も含みます。週に数日の勤務でも、常態として働いている人は数に入れます。人数が増減しやすい会社は、繁忙期だけでなく普段の人数で50人を超えていないかを確認しておきましょう。
事業場の規模で変わる選任産業医の人数と形態
選任産業医には、月に数回など決まった日に訪問する「嘱託産業医」と、その事業場に常勤する「専属産業医」があります。どちらが必要かは、労働安全衛生規則第13条で次のように決められています。
- 常時50人以上999人以下:産業医を1人以上選任(嘱託産業医でよい)
- 常時1,000人以上、または有害業務に常時500人以上が従事:その事業場に専属の産業医を選任
- 常時3,000人を超える:産業医を2人以上選任
有害業務には、著しく暑い・寒い場所での業務、深夜業を含む業務、重量物の取り扱いなどが含まれます。従業員30〜100人ほどの会社であれば、多くは嘱託産業医を1人選任する形になります。
産業医の選任はいつから?50人に達したら14日以内
次に、産業医の選任の期限と手順を見ていきます。「50人を超えてから探し始めたら間に合わなかった」というケースは少なくないため、流れを先に押さえておくことが大切です。
「選任すべき事由が発生した日」から14日以内
期限は、労働安全衛生規則第13条で「選任すべき事由が発生した日から14日以内」と決められています。起点になるのは、たとえば次のような日です。
- 採用や異動で、事業場の人数が常時50人以上になった日
- これまでの産業医が辞任・退任した日
14日は、医師を探して条件を相談し、契約を結ぶには短い期間です。採用計画で50人に届く見込みが立った段階で、候補探しを始めておくと安心です。
選任したら労働基準監督署へ報告する
産業医を選任したら、遅滞なく所轄の労働基準監督署長に報告します(労働安全衛生規則第13条第2項)。「産業医の選任届」と呼ばれることもありますが、法令上は選任報告です。主に次の事項を記入し、要件を満たしていることを証明する書類(研修の修了証など)の写しを添えます。
- 事業場の名称・所在地と労働者数
- 産業医の氏名、生年月日、選任年月日
- 産業医の要件のどれに当てはまるかと、医籍の登録番号
- 専門科名、専属かどうか
- 前任者がいる場合は、その氏名と辞任・解任の年月日(初めて選任する場合はその旨)
2025年1月1日からは、産業医の選任報告を含む一部の手続きで、労働基準監督署への報告が原則として電子申請になりました。e-Govの電子申請や、厚生労働省の入力支援サービスを使って作成・提出します。詳しくは東京労働局の電子申請の案内で確認できます。
なお、産業医が辞任したときや解任したときも、労働基準監督署への報告が必要です。後任の選任報告にあわせて行うこともできます。あわせて、辞任・解任の事実と理由を衛生委員会に報告することも義務づけられています(労働安全衛生規則第13条第4項・第5項)。
産業医の選任の手順
ここからは、初めて産業医を選任する会社に向けて、実際の進め方を順番に紹介します。50人に達する前から動き始めると、14日の期限に追われずにすみます。
ステップ1:事業場ごとの人数を確認する
拠点ごとに、パートやアルバイトを含めた常時使用する労働者の数を洗い出します。50人に近い事業場があれば、いつごろ50人に達しそうかも把握しておきます。
ステップ2:産業医の候補を探す
探し方には、地域の医師会に相談する、取引のある健診機関や医療機関に相談する、産業医の紹介サービスを使う、などがあります。紹介の窓口を設けている医師会もあるので、まずは事業場がある地域の医師会に問い合わせてみるとよいでしょう。
ステップ3:業務内容と訪問頻度を決めて契約する
月に何回、何時間訪問してもらうか、健康診断の結果確認や面接指導をどこまで頼むかを話し合い、契約書にまとめます。後で説明する職場巡視や衛生委員会への出席も、契約の内容に入れておく必要があります。
産業医の選任費用(報酬)には公的な基準がなく、訪問の頻度と時間、面接指導や休職・復職の面談を追加で頼むかどうかで大きく変わります。民間の公開情報では、50人規模の嘱託産業医で月数万円程度からの例が多く、面接指導などは1回ごとの追加料金とされることもあります。金額は目安にとどめ、業務の範囲をそろえたうえで複数の見積もりを比べましょう。
ステップ4:労働基準監督署に選任報告をする
選任したら、遅滞なく選任報告を提出します。産業医の要件を証明する書類の写しも忘れずに用意しましょう。
ステップ5:社内に周知する
産業医を選任した会社は、産業医の業務の内容や、産業医に健康相談を申し出る方法などを、掲示や社内ポータルなどで従業員に知らせる義務があります(労働安全衛生法第101条第2項)。「誰に、どうやって相談できるのか」が伝わらないと、せっかくの産業医が活用されません。
ただ、周知をしても、月に数時間の訪問日だけで社員の悩みを拾いきるのは難しいものです。産業医の選任とあわせて、訪問日以外にも社員が話せる相談先をどう用意するかを考えるときの材料として、ココロチェックのサービス資料をご用意しています。
資料ダウンロード
産業医の訪問日以外の相談先に。ココロチェックのサービス資料
選任産業医の職務と、会社が果たすべき義務
産業医の義務は「選任したら終わり」ではありません。ここでは、選任産業医が行う職務と、会社が産業医に対して果たすべき義務を整理します。
選任産業医の主な職務
労働安全衛生規則第14条では、産業医の職務として、医学の専門的な知識が必要な次のような事項が定められています。
- 健康診断の実施と、その結果に基づく措置
- 長時間労働者などへの面接指導と、その結果に基づく措置
- ストレスチェックの実施と、高ストレス者への面接指導、その結果に基づく措置
- 作業環境の維持管理と、作業の管理
- 健康教育、健康相談など、健康の保持増進のための措置
- 衛生教育
- 健康障害の原因の調査と、再発防止のための措置
50人以上の事業場で行うストレスチェックでは、産業医が実施者になったり、高ストレス者の面接指導を担当したりすることが多くあります。
毎月1回の職場巡視
産業医は、少なくとも毎月1回、作業場などを巡視し、健康を損なうおそれのある作業方法や衛生状態があれば、必要な措置をとることが定められています(労働安全衛生規則第15条)。
ただし、衛生管理者の巡視結果などの情報を毎月会社から受け取り、会社の同意がある場合は、巡視を2か月に1回にできます。嘱託産業医の訪問回数を決めるときは、この条件も踏まえて調整しましょう。
会社が産業医に対して負う義務
2019年4月の働き方改革関連法の施行で、産業医の機能が強化され、会社側の義務も増えました。主なものは次のとおりです。
- 時間外・休日労働が月80時間を超えた従業員の氏名と時間などの情報を、産業医に提供する
- 産業医が職務を行うための権限を与える(会社への意見、従業員からの情報収集、緊急時の指示など)
- 産業医から勧告を受けたら尊重し、その内容と対応を衛生委員会に報告し、記録を3年間保存する
- 産業医が勧告や助言をしたことを理由に、解任など不利益な扱いをしない
- 産業医が辞任・解任したときは、その旨と理由を衛生委員会に報告する
産業医を「名前だけ置いている」状態では、こうした義務を果たせません。訪問日には人事担当者が同席し、気になる従業員の状況や職場の変化を共有する時間をとるとよいでしょう。
産業医を選任しないとどうなる?罰則とリスク
「産業医を選任していないと、どうなるのか」は経営者が気にする点です。法律上の罰則と、罰則以外のリスクを分けて確認します。
選任義務違反は50万円以下の罰金
産業医の選任義務(労働安全衛生法第13条第1項)に違反した場合は、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象になります。さらに第122条の両罰規定により、違反した担当者だけでなく、法人である会社にも罰金刑が科されることがあります。
この罰則は、e-Gov法令検索で労働安全衛生法の条文を確認できます。14日以内に選任しなかった場合や、産業医の要件を満たさない医師を選任した場合も、選任の義務を果たしていないと判断されるおそれがあります。
実際には是正勧告から始まることが多い
労働基準監督署の調査(臨検)で選任していないことがわかると、多くはまず是正勧告を受け、期限までに選任して報告するよう求められます。指導に従わず放置するなど悪質な場合に、送検や罰金に進むことがあります。
罰則よりも大きい安全配慮義務のリスク
会社には、従業員が心身ともに安全に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があります。もし従業員が長時間労働やメンタルヘルス不調で倒れた場合、義務である産業医を置いていなかったことは、会社が健康管理を怠っていた事情として見られる可能性があります。
結果として、損害賠償を求められるリスクや、採用・定着への影響にもつながります。メンタル不調で会社の責任が問われる場面については、安全配慮義務とメンタル不調で問われる会社の責任が参考になります。
産業医がいない会社(50人未満)の義務と対応
従業員30〜100人ほどの会社では、事業場ごとに見ると50人未満で、産業医がいない会社が多くあります。ここでは、産業医 50人未満の事業場に求められていることと、使える支援を紹介します。
50人未満の事業場は「努力義務」
労働安全衛生法第13条の2は、産業医の選任義務がない事業場について、労働者の健康管理などに必要な医学の知識を持つ医師、または保健師に、健康管理の全部または一部を行わせるよう努めなければならないと定めています。
罰則はありませんが、「産業医がいない会社は健康管理をしなくてよい」という意味ではありません。法律上も、医師や保健師の力を借りて健康管理を行うことが望ましいとされています。
なお、「産業医の義務化が50人未満にも広がるのでは」という声を聞くことがありますが、2026年10月時点で、50人未満の事業場に産業医の選任を義務づける法改正は行われていません。50人未満で新たに義務になるのは、2028年4月1日施行のストレスチェックです。
産業医がいない会社でも医師が必要になる場面
産業医の選任義務がなくても、次のような義務は人数に関係なくすべての会社にあります。
- 健康診断で異常の所見があった従業員について、医師の意見を聴く
- 時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積がある従業員から申し出があれば、医師による面接指導を行う
さらに、2028年4月1日からは50人未満の事業場もストレスチェックの実施が義務になり、高ストレス者から申し出があれば医師による面接指導が必要になります。50人未満の会社が義務化までに準備することは、ストレスチェック義務化の対象と準備にまとめています。
地域産業保健センターを頼る
産業医がいない会社がまず頼れるのが、地域産業保健センター(地さんぽ)です。50人未満の事業場を対象に、医師による健康診断結果の意見聴取、長時間労働者や高ストレス者の面接指導、健康相談、訪問指導などを原則無料で行っています。
運営は独立行政法人労働者健康安全機構で、全国各地に窓口があります。サービスの概要は労働者健康安全機構の地域窓口(地域産業保健センター)のページで確認できます。申込書の送り方や利用回数の上限など、実際の使い方は地域産業保健センターの使い方と申込手順にまとめています。
産業医がいない会社で休職者が出たら
産業医がいない会社でメンタル不調による休職者が出た場合は、主治医の診断書をもとに休職を判断し、復職のときも主治医の意見を聞くのが基本です。復職の可否を会社だけで判断しにくいときは、地域産業保健センターの健康相談で医師の助言を受けられる場合もあるので、担当センターに問い合わせてみましょう。診断書を受け取ってから復職までの会社側の段取りは、休職の手続きの会社側の流れで確認できます。
50人に近づいてきたら準備しておくこと
事業場の人数が40人を超えてきたら、50人に達したときの準備を始めておくと慌てずにすみます。
- 産業医の候補を探し、費用や訪問頻度の相場を確かめておく
- 衛生管理者の資格を持つ人がいるか確認し、いなければ受験の準備をする
- 衛生委員会の進め方や、メンバーの候補を考えておく
- 健康診断やストレスチェックの記録を整理しておく
産業医がいる会社になると増える義務
事業場が常時50人以上になると、産業医以外にも同時に始まる義務があります。産業医がいる会社としての体制をまとめて整えられるよう、全体像を確認しておきましょう。
50人以上で同時に発生する主な義務
労働安全衛生法と関係する政令・省令では、常時50人以上の事業場に次のような義務が定められています。
- 産業医の選任:14日以内に選任し、労働基準監督署に報告
- 衛生管理者の選任:資格を持つ人を14日以内に選任し、報告
- 衛生委員会の設置:毎月1回以上開催し、事業者が指名した産業医も委員になる
- 定期健康診断結果報告:健康診断の結果を労働基準監督署に報告
- ストレスチェックの実施と報告:年1回実施し、結果を労働基準監督署に報告(報告を怠ると50万円以下の罰金の対象)
産業医は衛生委員会の委員になるため、毎月の開催日に合わせて訪問日を組むと、委員会への出席と職場巡視を同じ日にまとめやすくなります。委員会のメンバー構成や議題の決め方は、安全衛生委員会の設置義務とメンバーで解説しています。
産業医がいても相談が集まるとは限らない
嘱託産業医の訪問は、月に1回、数時間ということが一般的です。その限られた時間で、すべての従業員の悩みを拾うのは現実的ではありません。
また、「会社が選んだ医師に話すと、人事に伝わるのでは」と感じて、相談をためらう従業員もいます。産業医がいる会社でも、従業員が気軽に話せる相談先を別に用意しておくと、不調の早い段階で支援につながりやすくなります。
ココロチェックで、産業医の手が届きにくい相談を支える
産業医の義務を果たすことは大切ですが、それだけで職場のメンタルヘルス対策が十分になるわけではありません。産業医がいない会社はもちろん、いる会社でも「相談の入り口」と「組織の状態の把握」は別に考える必要があります。会社として取り組むことの全体像は、職場のメンタルヘルス対策の4つのケアで整理しています。
とはいえ、社員が人事や上司に知られずに話せる場所を、社内の人だけでつくるのは簡単ではありません。月に数時間の産業医の訪問や、回数に上限のある地域産業保健センターだけでは、日ごろの小さな不調まで受け止めきれないこともあります。
ココロチェックは、産業保健の担当者がいない会社のための、法人向けメンタルヘルスサービスです。組織の状態を「測る」ところから、社員が専門家に相談して「癒す」ところまでを、一つのサービスで支えます。
- 組織の状態を測る:設問に答えるだけで、組織の状態と部署ごとの傾向がわかる組織診断を無料で用意しています
- 社員の相談先になる:公認心理師・臨床心理士などの専門家に、オンラインで1回30分から相談できます。産業医の訪問日を待たずに話せる場として使えます
- 人事に個人の情報は渡さない:会社が見られるのは組織単位の傾向だけで、誰が相談したかは本人の同意なく伝わりません
なお、ココロチェックは産業医の選任や医師による面接指導を代わりに行うものではありません。法律上の義務は産業医や地域産業保健センターで対応しつつ、その手前の相談や組織の見える化を補う形でご活用ください。まずは無料の組織診断で、自社の状態を確かめるところから始めてみませんか。
産業医の手が届く前に、組織の状態を知る
設問に答えるだけで、組織の状態と部署ごとの傾向がわかる無料の組織診断です。産業医の有無にかかわらず始められます。
産業医の義務についてのよくある質問
最後に、産業医の義務について、人事・総務のご担当者からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 産業医は何人から必要ですか?
常時50人以上の労働者を使用する事業場から、産業医の選任が義務になります。人数は会社全体ではなく事業場ごとに数え、パートやアルバイトも含みます。1,000人以上の事業場などは専属の産業医、3,000人を超える事業場は2人以上の産業医が必要です。
Q. 産業医の選任はいつまでにすればいいですか?
選任すべき事由が発生した日、たとえば事業場の人数が50人に達した日から14日以内です。選任後は遅滞なく、労働基準監督署に選任報告を提出します。2025年1月からは原則として電子申請で報告します。
Q. 産業医を選任しないと罰則はありますか?
あります。常時50人以上の事業場で産業医を選任しないと、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象になり、両罰規定で会社も罰金刑を科されることがあります。実際には、労働基準監督署の是正勧告から始まることが多くあります。
Q. 50人未満の会社でも産業医は必要ですか?
50人未満の事業場に産業医の選任義務はありません。ただし、医師や保健師に健康管理を行わせるよう努める「努力義務」があります。健康診断後の医師の意見聴取や長時間労働者の面接指導は人数に関係なく必要なので、地域産業保健センターなどを活用しましょう。
Q. 社長が医師なら、自社の産業医を兼ねられますか?
法人の代表者や、事業場の運営を統括管理する人は、医師であっても原則としてその事業場の産業医になれません(労働安全衛生規則第13条第1項第2号)。会社の立場から離れて助言することが難しくなるためです。産業医としての要件(指定の研修の修了など)を満たしているかも確認が必要です。
Q. 産業医が長期間来られないときはどうすればいいですか?
産業医が病気やけがなどで長く職務を行えないときは、代理者を選任する必要があります(労働安全衛生規則第13条第3項による第8条・第3条の準用)。産業医が辞めた場合は、14日以内に後任を選任し、労働基準監督署への報告と衛生委員会への報告を行います。
まとめ:産業医の義務は「50人」と「14日」を押さえて早めに準備を
産業医の義務について、要点を振り返ります。
- 常時50人以上の事業場は、50人に達した日から14日以内に産業医を選任し、労働基準監督署に報告する義務がある(違反は50万円以下の罰金)
- 選任した後も、職場巡視、情報提供、勧告の尊重、社内への周知など、会社が果たすべき義務が続く
- 50人未満の事業場は努力義務だが、健康診断後の意見聴取や面接指導は必要なので、地域産業保健センターなどを早めに確認しておく
産業医は、法律を守るためだけの存在ではなく、従業員の健康を会社が守るための大切なパートナーです。選任の義務を果たしたうえで、従業員が気軽に相談できる仕組みもあわせて整えておきましょう。
50人に近づいている会社も、すでに産業医がいる会社も、まずは今の職場の状態を知っておくと、産業医や公的な窓口に何を相談すべきかが見えやすくなります。
50人を迎える前に、職場の状態を確かめる
無料の組織診断で、組織の状態と部署ごとの傾向がわかります。産業医の選任や衛生委員会の準備と並行して始められます。
