「社員の様子がおかしいけれど、本人が何も言わないから様子を見ている」「メンタル不調で休職者が出たら、会社はどこまで責任を問われるのか」。こうした不安を抱える経営者や人事・総務のご担当者は少なくありません。
会社には、社員が心身ともに健康に働けるよう配慮する安全配慮義務があります。この義務はケガや事故だけでなく、メンタルヘルスにも及びます。不調を放置して社員が重い病気になった場合、会社が損害賠償を求められることもあります。
先に結論をお伝えすると、安全配慮義務を果たしたかどうかは「不調に気づけたか」と「気づいた後に手を打ったか」で判断される傾向があり、本人が申告しなかったことは会社を守る理由になりにくいとされています。この記事では、厚生労働省の資料と最高裁の判例をもとに、安全配慮義務の根拠、何をすれば義務を果たしたといえるのか、違反したときの責任、そして中小企業が今日からできる対策を整理しました。会社全体のメンタルヘルス対策の進め方は、職場のメンタルヘルス対策の全体像でまとめています。
この記事でわかること
- 安全配慮義務とは何か、労働契約法5条と労働安全衛生法との関係
- 義務を果たしたかどうかを分ける「予見可能性」と「結果回避」の考え方
- メンタルヘルスで安全配慮義務が問われやすい4つの場面
- 安全配慮義務違反の事例(電通事件・東芝事件)と損害賠償の責任
- 産業医がいない中小企業が今日から始められる対策
安全配慮義務とは?根拠は労働契約法5条
まず、安全配慮義務がどんな義務で、どの法律に書かれているのかを確認しましょう。法律上の位置づけを知っておくと、会社が求められていることの範囲が見えやすくなります。
安全配慮義務とは
安全配慮義務とは、会社(使用者)が、社員の生命や身体、心身の健康を危険から守るよう配慮する義務のことです。
社員は、会社が決めた場所で、会社が用意した設備や仕事の進め方に沿って働きます。働く環境を決めているのは会社なので、その環境で社員が健康を損なわないよう気を配る責任も会社にある、という考え方です。
もともとは裁判の積み重ねで確立したルールで、最高裁の陸上自衛隊事件(1975年)や川義事件(1984年)の判決が出発点とされています。
安全配慮義務は何法の何条?いつから?
判例で認められてきた考え方は、2008年3月1日に施行された労働契約法の5条で条文になりました。民法には安全配慮義務そのものを定めた条文はなく、違反したときの損害賠償は民法の債務不履行や不法行為の規定で判断されます。労働契約法5条の条文は次のとおりです。
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」(労働契約法5条)
厚生労働省の施行通達では、次の点が示されています。
- 雇用契約書や就業規則に書いていなくても、会社は当然にこの義務を負う
- 「生命、身体等の安全」には心身の健康も含まれる
- 「必要な配慮」は一律に決まるものではなく、職種や仕事の内容、働く場所など具体的な状況に応じて求められる
つまり、安全配慮義務はメンタルヘルスにもはっきり及びます。「心の問題は本人のことだから」と会社が関与しない、という考え方は通りません。
労働安全衛生法との関係
よく似た法律に労働安全衛生法があります。こちらは健康診断、ストレスチェック、長時間労働者への医師の面接指導など、会社がやるべき具体的な措置を定めた法律です。
両者の関係は次のとおりです。
- 労働安全衛生法:会社が守るべき最低限の基準。違反すると罰則がある項目も多い
- 安全配慮義務:法律に書かれた措置をしたかどうかに限らず、その社員の状況に応じて必要な配慮をしたかが問われる
施行通達でも、労働安全衛生法などの関係法令を守ることは当然の前提とされています。法律で決められた措置をすべて守っていても、社員の状況に応じた配慮が足りなければ安全配慮義務違反とされる可能性がある、という点が大切です。
安全配慮義務に罰則はある?
労働契約法には、安全配慮義務に違反したこと自体への罰則はありません。ただし、罰則がないから軽い義務というわけではありません。違反の結果として社員が病気になったり亡くなったりすれば、民事上の損害賠償責任を負います。社員が亡くなった事案などでは賠償額が高額になることもあり、罰金よりはるかに重い負担になり得ます。
安全配慮義務を果たしたといえる基準:予見可能性と結果回避
では、会社は何をすれば安全配慮義務を果たしたことになるのでしょうか。裁判では主に「予見可能性」と「結果回避」の2つの視点から判断される傾向があります。
予見可能性:不調や危険に気づけたか
予見可能性とは、会社が社員の健康被害を予測できたかどうかです。ポイントは「実際に知っていたか」だけでなく、「注意していれば知り得たか」も問われることです。
たとえば次のような事情があれば、会社は不調を予見できたと判断されやすくなります。
- 残業時間が月80時間を超えるなど、長時間労働が続いていた
- 遅刻や欠勤が増えた、ミスが目立つなど、勤務の様子に変化があった(欠勤が続くときの会社の対応は休職と欠勤の違いで解説しています)
- 本人から「体調が悪い」「仕事を減らしてほしい」と申し出があった
- ハラスメントの相談や、周囲からの報告があった
勤怠の記録や面談の内容など、会社の手元にある情報から読み取れたはずの変化は、「気づけたはず」と評価されやすい点に注意が必要です。
結果回避:気づいた後に手を打ったか
結果回避とは、予見できた健康被害を防ぐために、会社が必要な措置をとったかどうかです。気づいていたのに何もしなかった、あるいは対応が形だけだった場合は、義務を果たしていないと判断されやすくなります。
具体的には、次のような対応が考えられます。
- 業務量を減らす、担当を変える、残業を止める
- 人間関係が原因とみられる場合は、本人の意向も聞いたうえで異動や席の配置を見直す
- 産業医や医師の面接、専門家への相談につなげる
- 必要に応じて受診をすすめ、休ませる(休職)ことを検討する
- ハラスメントの事実を確認し、行為者への対応や配置の見直しを行う
「本人が申告しなかった」は言い訳になりにくい
メンタルヘルスで特に押さえておきたいのは、本人からの申告がなくても会社は配慮を求められるという点です。
後で紹介する東芝事件の最高裁判決では、メンタルヘルスに関する情報は、本人にとって職場に知られたくないプライバシーにあたるため、自分から申告することは期待しにくいと示されました。そのうえで、会社は申告がなくても健康に関わる労働環境に十分注意を払う必要があり、体調の悪化が見て取れる場合には業務の軽減などの配慮に努める必要があるとしています。
「言ってくれれば対応したのに」は、会社を守る理由になりにくいと考えておきましょう。
安全配慮義務はどこまで求められる?範囲の考え方
とはいえ、会社が社員の健康のすべてに責任を負うわけではありません。施行通達のとおり、求められる配慮は職種や仕事の内容、本人の状況によって変わり、予見できなかった危険まで防ぐことは求められていません。
社員の側にも、健康診断を受けること(労働安全衛生法66条5項)や、会社が用意した措置を利用して健康の保持増進に努めること(同法69条2項)が定められており、これを「自己保健義務」と呼ぶことがあります。ただし、自己保健義務があるからといって、会社が不調のサインを見過ごしてよいことにはなりません。
義務を果たしたかどうかを最終的に決めるのは裁判所で、個別の事情を総合して判断されます。迷ったときは「予見できたか」「手を打ったか」の2点に立ち返り、記録を残しておくことが現実的な備えです。
安全配慮義務は誰が負う?管理職との関係
安全配慮義務を負うのは、社員と労働契約を結んでいる会社です。ただし、実際に仕事を割り振り、指示を出すのは上司です。電通事件の最高裁判決は、会社に代わって部下を指揮監督する権限を持つ人は、会社が負う注意義務の内容に沿ってその権限を使うべきだとしています。
つまり、管理職が部下の長時間労働や不調を知りながら放置すれば、それは会社の義務違反として扱われます。管理職に「部下の健康に気を配ることは自分の仕事の一部」と理解してもらうことが、会社を守ることにもつながります。
安全配慮義務がメンタルヘルスで問われやすい4つの場面
安全配慮義務とメンタルの問題が結びつきやすい場面は、ある程度決まっています。ここでは、中小企業でも起こりやすい4つの場面を紹介します。
場面1:長時間労働が続いている
長時間労働は、メンタル不調の大きな要因の一つです。労働安全衛生法では、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積がある社員が申し出た場合、医師による面接指導を行うことが会社の義務とされています。
また、2019年4月からは、管理職を含むすべての社員の労働時間の状況を、客観的な方法で把握することも義務になりました。「残業の実態を把握していなかった」という事情は、それ自体が配慮の不足と見られるおそれがあります。
場面2:ハラスメントが起きている
パワーハラスメントの防止措置は、2022年4月から中小企業にも義務づけられています。方針の明確化と周知、相談窓口の設置、相談があった際の迅速な事実確認と対応などが求められます。
厚生労働省が2026年7月に公表した令和7年度の「過労死等の労災補償状況」では、精神障害の労災支給決定は1,082件で過去最多でした。原因となった出来事で最も多かったのは「上司等からのパワーハラスメント」で、次いで顧客などからの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)とセクシュアルハラスメントが多くなっています。
相談を受けたのに放置した、加害者と同じ部署で働かせ続けたといった対応は、安全配慮義務違反と判断される原因になりやすい場面です。顧客からの迷惑行為も例外ではなく、2026年10月1日からはカスハラ対策の措置もすべての事業主の義務になりました。社内で何を整えるかはカスハラ対策の義務化で企業がやることを確認してください。
場面3:不調のサインを見落としている
メンタル不調は、外から見て分かりにくいのが特徴です。ただ、多くの場合は次のような変化が先に現れます。
- 遅刻や早退、急な休みが増える
- 表情が暗い、口数が減る、身だしなみが乱れる
- ミスや仕事の遅れが増える
- 「眠れない」「疲れが取れない」と口にする
こうした変化に周囲が気づいていたのに、誰も声をかけず、上司にも人事にも情報が上がらなかった場合、会社として予見できたのに対応しなかったと評価されるおそれがあります。
特に、本人が「消えてしまいたい」「死にたい」といった言葉を口にしたときは、様子見にせず、その日のうちに上司と人事で共有し、医療機関の受診につなぐことを最優先にしてください。本人の同意を得たうえで家族に連絡することも検討します。
場面4:休職・復職のとき
休職や復職のタイミングも、安全配慮義務が問われやすい場面です。たとえば、主治医が「復職可能」と判断しても、元の業務量にすぐ戻せば再発の危険があります。逆に、十分な検討をせずに復職を認めない対応も、別のトラブルを招きかねません。
厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」で、休業の開始から復職後のフォローアップまでを5つのステップで示しています。こころの耳のeラーニングで学ぶ15分でわかる職場復帰支援で要点を確認できます。診断書の受け取りから復職判定までの会社側の段取りは、休職の手続きを会社側の流れで解説した記事で順を追って整理しています。
安全配慮義務違反の事例:代表的な裁判例
ここでは、メンタルヘルスに関する安全配慮義務違反の事例として、よく知られる最高裁の判決を紹介します。いずれも厚生労働省のポータルサイト「確かめよう労働条件」で紹介されている裁判例です。
電通事件(最高裁 2000年3月24日判決)
入社2年目の社員が、長時間労働が続くなかでうつ病になり、自殺した事案です。遺族が会社に損害賠償を求めました。
最高裁は、会社は「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務」を負うと示し、会社の損害賠償責任を認めました。過労によるうつ病と自殺について、会社の民事上の責任を認めたリーディングケースとされています。
この判決から読み取れるのは、上司が長時間労働や健康状態の悪化を知りながら、業務量を調整するなどの手を打たなかったことが、会社の責任につながるという点です。
東芝事件(最高裁 2014年3月24日判決)
過重な業務の負担によりうつ病になった社員について、会社が損害賠償の責任を負うかが争われた事案です。会社側は、社員が神経科への通院や病名などを上司や産業医に伝えていなかったのだから、賠償額を減らすべき(過失相殺)と主張しました。
最高裁は、メンタルヘルスに関する情報は職場で知られることなく働き続けたいと考えるのが通常のプライバシー情報であり、会社は申告がなくても労働環境に十分注意を払う安全配慮義務を負うと示しました。そのうえで、社員が通院などを申告しなかったことを理由に賠償額を減らすことはできないと判断しています。
詳しい判旨は、厚生労働省の確かめよう労働条件「メンタルヘルス」の裁判例で読むことができます。
静岡県(警部補過労自殺)事件(最高裁 2025年3月7日判決)
公務員の事案ですが、中小企業にも参考になる近年の判決として紹介します。自殺の直前1か月に業務が重なり、時間外勤務が112時間を超え、14日間の連続勤務が2回続いていた警察官の事案です。本人は自殺の3か月ほど前に職場で受けたストレス診断で最低評価となり、そのことを上司に伝えていましたが、負担を軽くする措置はとられていませんでした。
最高裁は電通事件の判断を引用し、上司らは業務の状況を把握できる立場にあり、負担を減らさなければ心身の健康を損なう可能性を認識できたとして、注意義務を怠ったと判断しました。そのうえで県の損害賠償責任を認め、損害額を審理させるため原判決を破棄して差し戻しています。
民間企業に置きかえると、「本人から不調の兆しを伝えられ、業務が重なっていることも把握できたのに、業務量を調整しなかった」ことが責任につながり得る、という教訓です。
過重労働に関する裁判例は、確かめよう労働条件「過重労働」の裁判例にまとまっています。
安全配慮義務違反の損害賠償:会社が負う責任
安全配慮義務に違反した場合、会社はどのような責任を負うのでしょうか。ここでは、損害賠償の法的な仕組みと、経営者が押さえておきたい点を整理します。
債務不履行と不法行為の2つの根拠
安全配慮義務違反による損害賠償は、主に次の2つの根拠で請求されます。
- 債務不履行(民法415条):雇用契約にともなう安全配慮義務を果たさなかったことへの責任
- 不法行為(民法709条・715条):注意を怠って社員の健康を損なわせたことへの責任。上司や同僚の行為について、会社が使用者責任を問われることもある
実際の裁判では、両方をあわせて主張されることも少なくありません。
労災保険とは別に賠償を求められる
社員のメンタル不調が業務によるものと認められれば、労災保険から治療費や休業中の補償などが支払われます。ただし、労災保険の給付には慰謝料が含まれず、補償の範囲にも限りがあります。どのような場合に業務による精神障害と認められるかは、精神障害の労災認定基準で解説しています。
そのため、労災の認定とは別に、会社に対して慰謝料や逸失利益(病気や死亡がなければ得られたはずの収入)などの損害賠償が請求されることがあります。
請求できる期間は長い
2020年4月に施行された改正民法では、人の生命や身体を害したことによる損害賠償の請求期間が長くなりました。債務不履行・不法行為のどちらの場合も、請求できることを知った時(不法行為では損害と加害者を知った時)から5年、権利を行使できる時(不法行為では不法行為の時)から20年です。
退職した元社員から、数年後に請求を受けることもあり得ます。後で説明する「記録を残す」ことが重要なのは、このためです。
中小企業が今日からできる安全配慮義務の対策
安全配慮義務は、特別なことをする義務ではありません。「気づく仕組み」と「気づいた後に動ける仕組み」を日頃から用意しておくことが基本です。産業医がいない中小企業でも始めやすい順に紹介します。
ステップ1:労働時間を正しく把握する
まずは、タイムカードやパソコンの使用記録などで、全員の労働時間を客観的に把握します。月45時間を超える残業が続く社員、月80時間を超えた社員がいれば、業務量の調整や医師の面接につなげる流れを決めておきましょう。
長時間労働者の面接指導の対象や手順は、こころの耳の長時間労働者、高ストレス者の面接指導についてで確認できます。
ステップ2:ストレスチェックで状態を把握する
ストレスチェックは、社員が自分のストレスに気づき、会社が職場の課題を知るための仕組みです。現在は50人以上の事業場で義務ですが、2028年4月からは50人未満の事業場も義務になります。
部署ごとの集団分析を行えば、負担が偏っている職場を早めに見つけられます。50人未満の事業場がいつから何をすればよいかは、ストレスチェック義務化の対象と準備で確認できます。
ステップ3:社員が相談できる窓口を用意する
不調は、本人が声を上げにくいものです。上司や人事には話しにくくても、社外の専門家になら相談できるという社員もいます。
- 社内の相談窓口(ハラスメント相談を含む)を決め、誰に何を相談できるかを周知する
- 社外の専門家に相談できる窓口も用意しておく
- 相談内容が本人の同意なく人事評価などに使われないことを明言する
窓口があることを繰り返し伝えておくと、早い段階で相談につながりやすくなります。窓口をつくっても使われない会社は少なくありません。社内相談窓口が使われない理由と改善策を参考に、相談しやすい形を整えておきましょう。
ステップ4:管理職のラインケアを育てる
ラインケアとは、管理職が部下の心の健康に気を配り、職場環境の改善や相談対応を行うことです。「いつもと違う」変化に最初に気づけるのは、日頃部下と接している上司です。
- 不調のサインの例と、声のかけ方を管理職に共有する
- 気づいたときの報告先(人事・経営者)を決めておく
- 残業や業務の偏りを、定期的に確認する場を設ける
管理職が一人で抱え込まず、会社として対応できる流れをつくることが大切です。
ステップ5:対応したことを記録に残す
面談の日時と内容、業務量の調整、受診や相談のすすめ、休職・復職の判断などは、その都度記録に残しておきましょう。記録は、会社がどんな配慮をしたかを後から示すための大切な材料になります。
ただし、健康に関する情報は特に慎重な扱いが必要な個人情報です。保管する人と場所を限り、必要以上に共有しないようにしてください。
なお、安全配慮義務を果たしたかどうかは、個別の事情によって判断が分かれます。具体的なケースで迷ったときは、社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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安全配慮義務の対策の中心は、不調のサインに早く気づくことと、気づいたときに相談できる先を用意しておくことです。どちらも、産業保健の担当者がいない会社ほど手薄になりやすい部分です。社員が上司や人事に話しにくい悩みを抱えたまま働き続けると、会社が気づけるのは不調が重くなってからになりがちです。
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安全配慮義務のよくある質問
最後に、安全配慮義務について、経営者や人事・総務のご担当者からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 安全配慮義務とは、わかりやすく言うと何ですか?
会社が、社員がケガや病気をせず、心身ともに健康に働けるように配慮する義務です。労働契約法5条に定められており、雇用契約書に書いていなくても、すべての会社が負っています。
Q. 安全配慮義務はメンタルヘルスにも及びますか?
及びます。厚生労働省の通達で、労働契約法5条の「生命、身体等の安全」には心身の健康も含まれると示されています。長時間労働やハラスメントによるメンタル不調について、会社の責任が認められた裁判例も多くあります。
Q. 安全配慮義務違反に罰則はありますか?
労働契約法上の罰則はありませんが、社員に健康被害が生じれば損害賠償責任を負います。健康診断の未実施など労働安全衛生法の義務違反は、同法の罰則の対象になることがあります。
Q. 本人が不調を隠していた場合でも、会社の責任になりますか?
個別の事情によりますが、本人の申告がなかったことだけで会社の責任がなくなるとは限りません。東芝事件の最高裁判決では、メンタルヘルスの情報は申告しにくいものであり、会社は申告がなくても労働環境に注意を払う必要があると示されました。
Q. パートや派遣社員にも安全配慮義務はありますか?
パートやアルバイトも雇用契約を結んでいる社員なので、会社は安全配慮義務を負います。派遣社員については、実際に指示を出して働かせている派遣先にも配慮が求められると考えられています。判断に迷う場合は専門家に確認してください。
まとめ:安全配慮義務は「気づく仕組み」と「動ける仕組み」で果たす
安全配慮義務とメンタルヘルスについて、要点を振り返ります。
- 安全配慮義務は労働契約法5条に定められ、心身の健康も含まれる。労働安全衛生法を守るだけでは十分とは限らない
- 義務を果たしたかは、不調を予見できたか(予見可能性)と、防ぐ手を打ったか(結果回避)で判断される傾向がある。本人の申告がなくても配慮が求められる
- 違反すると、債務不履行や不法行為として損害賠償を求められる。労働時間の把握、ストレスチェック、相談窓口、ラインケア、記録の5つから備えを始める
社員の不調は、早く気づくほど打てる手が増えます。安全配慮義務を「訴えられないための守り」としてだけでなく、社員が安心して働き続けられる職場づくりの土台として、できることから始めていきましょう。最初の一歩として、いまの職場のどこに負担が集まっているかを把握しておくと、予見可能性への備えにもなります。
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