精神障害の労災認定基準とは?3つの要件と会社の対応

精神障害の労災認定基準とは?3つの要件と会社の対応

「社員から、うつ病は仕事のせいだから労災を申請したいと言われた」「労基署から資料の提出を求められたが、何を基準に判断されるのかわからない」。メンタル不調が労災になるかどうかは、人事・総務のご担当者にとって判断に迷いやすいテーマです。

精神障害が労災になるかは、厚生労働省の精神障害の労災認定基準(正式名「心理的負荷による精神障害の認定基準」)にもとづいて、労働基準監督署が判断します。結論からいうと、ポイントは3つの認定要件と、仕事のストレスを「強・中・弱」で測る心理的負荷評価表です。会社が労災かどうかを決めるわけではなく、会社に求められるのは、事実の証明と調査への協力です。

この記事では、令和5年9月に改正された現行の精神障害の労災認定基準を厚生労働省の原文で確認し、会社の担当者が押さえておきたい考え方と、労災申請を求められたときの対応を整理しました。

この記事でわかること

  • 精神障害の労災認定基準の3つの要件と、令和5年9月の改正点
  • 心理的負荷評価表の「強・中・弱」の考え方と、労災になりにくいケース
  • 長時間労働の目安(月80時間・100時間・160時間)
  • 社員から労災申請を求められたときの、事業主証明と協力の範囲
  • 精神障害の労災を防ぐために、会社がふだんからできること
目次

精神障害の労災認定基準とは?令和5年9月の改正ポイント

まず、認定基準がどんな位置づけのものか、直近の改正で何が変わったのかを確認しておきましょう。

労基署が「業務上かどうか」を判断するものさし

「心理的負荷による精神障害の認定基準」は、精神障害が仕事によるものかどうか(業務上か業務外か)を判断するために、厚生労働省が定めた基準です。全国の労働基準監督署は、この基準に沿って調査し、労災保険の給付をするかどうかを決めます。

現在の基準は、2023年(令和5年)9月1日付けの通達で新しく定められたものです。それまで使われていた2011年(平成23年)の基準は、このときに廃止されました。

令和5年9月の改正で変わったこと

改正の主なポイントは、次のとおりです。

  • 仕事のストレスの例を並べた「業務による心理的負荷評価表」を見直し、顧客や取引先などからの著しい迷惑行為(いわゆるカスハラ)を出来事として追加した
  • 感染症などの病気や事故の危険性が高い業務に従事したことも、出来事として追加した
  • パワーハラスメントの6つの類型すべてについて、強度の具体例を示した
  • すでに発病している精神障害が悪化した場合に、労災と認める範囲を広げた
  • 医学的な意見の集め方を見直し、判断を早めやすくした

とくに、カスハラが評価表に明記された点は、顧客対応の多い会社にとって見逃せない変更です。2026年10月1日からは、改正労働施策総合推進法により、企業にカスハラ対策の措置が義務づけられています。対策の進め方はカスハラ対策の義務化で企業がやることで整理しています。

精神障害の労災請求は過去最多に

厚生労働省が2026年7月15日に公表した令和7年度「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害の労災請求件数は4,958件で、前年度から1,178件増えました。支給決定(労災と認められた件数)は1,082件で、どちらも過去最多です。

出来事別では、上司などからのパワーハラスメントが222件で最多となり、セクハラと、顧客などによる著しい迷惑行為(カスハラ)がともに127件、仕事内容・仕事量の大きな変化が113件と続きました。詳しい数字は厚生労働省の公表資料で確認できます。

精神障害が労災認定される3つの要件

精神障害の労災認定基準では、次の3つの要件をすべて満たしたときに、業務上の病気として扱うとしています。

  • 要件1:認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  • 要件2:発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  • 要件3:業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

それぞれの意味を、会社の目線で見ていきます。

要件1:対象となる精神障害を発病している

対象になるのは、国際的な疾病分類(ICD-10)で「精神及び行動の障害」に分類される精神障害です。認知症や頭部外傷などによるもの、アルコールや薬物によるものは、この基準の対象から外れます。仕事に関連して発病しやすい代表例として、うつ病などの気分障害や、適応障害・急性ストレス反応などのストレス関連障害が挙げられています。

発病したかどうか、いつ発病したかは、主治医の意見や診療記録などをもとに、医学的に判断されます。会社や本人の感覚で決まるものではありません。

要件2:発病前おおむね6か月の間に強い心理的負荷がある

認定の中心になるのがこの要件です。発病前のおおむね6か月に、仕事上の出来事があり、その出来事と、その後の状況が「強い心理的負荷」だったといえるかを見ます。

ここで大切なのは、本人がどう感じたかではなく、職種や立場、年齢、経験が似ている「同種の労働者」が一般的にどう受け止めるか、という物差しで評価される点です。強さの判断には、次の章で説明する心理的負荷評価表が使われます。

なお、ハラスメントのように繰り返される出来事は、6か月より前に始まっていても、その期間まで続いていれば、始まりからの全体が評価の対象になります。

要件3:仕事以外の原因による発病とはいえない

仕事のストレスが強くても、同じ時期に私生活で大きな出来事(家族の死亡、離婚など)があったり、重いアルコール依存などの個人の要因が目立ったりする場合は、どれが発病の主な原因かを医学的に慎重に判断します。

ただし、仕事以外の出来事や個人の事情が「あった」だけで、すぐに労災が否定されるわけではありません。それらによって発病したことが医学的に明らかといえない限り、要件3は満たすと扱われます。

うつ病や適応障害も労災になる?

うつ病も適応障害も、認定基準の対象になる精神障害です。病名によって認定されやすさが決まるのではなく、あくまで要件2の「業務による強い心理的負荷」があったかどうかが分かれ目になります。

業務による心理的負荷評価表の考え方(強・中・弱)

要件2を判断するときの物差しが、認定基準の別表1「業務による心理的負荷評価表」です。評価表そのものは長いので、ここでは考え方の要点に絞って紹介します。原文は厚生労働省「精神障害の労災補償について」のページから、パンフレットで確認できます。

「特別な出来事」があれば、それだけで「強」

評価表には、まず「特別な出来事」が挙げられています。たとえば、生死にかかわる業務上のケガや病気をした、業務中に他人を死亡させたり重大なケガを負わせたりした、強姦など本人の意思を抑圧したわいせつ行為を受けた、極度の長時間労働をした、といったものです。これらにあたる場合は、ほかの事情を見るまでもなく、心理的負荷は「強」と判断されます。

具体的出来事に当てはめ、「強・中・弱」を総合評価する

特別な出来事がない場合は、評価表にある「具体的出来事」のどれにあたるか(ぴったり合わなければ近いもの)を決め、そのうえで「強」「中」「弱」の3段階で総合評価します。具体的出来事は、事故や災害の体験、仕事の失敗や責任の発生、仕事の量と質、役割や地位の変化、パワハラ、対人関係、セクハラといった類型に分けて並べられています。

総合評価では、出来事そのものだけでなく、その後の状況もあわせて見ます。

  • 出来事の内容や程度(ミスの大きさ、ハラスメントの態様など)
  • 出来事のあとの対応の難しさや、仕事量の変化
  • 職場から支援や協力があったか(応援体制、業務の見直しなど)
  • 仕事の裁量があったか(やり方を自分で決められたかなど)

とくに、職場の支援や協力がなかったことや、仕事の裁量がなかったことは、評価を強める方向にはたらくと明記されています。会社の動き方が、評価に直接かかわります。

パワハラ・カスハラの評価のポイント

支給決定の多いハラスメントについて、評価表の考え方を要点だけ紹介します。

  • パワハラ:人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた場合などは「強」になりうる。「中」程度の言動でも、会社に相談した、または会社が把握していたのに適切な対応がなく改善されなかった場合は「強」と評価されうる
  • カスハラ:暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求などを、反復・継続して執拗に受けた場合などは「強」になりうる。パワハラと同じく、会社が対応せず改善されなかった場合は「強」と評価されうる
  • 「執拗」は、何度も繰り返される場合が典型だが、1回でも長時間に及び、態様が強烈で悪質な場合は執拗と評価されることがある

どちらにも共通するのは、相談を受けた会社が動かなかったことが、評価を一段引き上げる要素として書かれている点です。パワハラの相談を受けたときの具体的な動き方は、パワハラ相談への対応手順にまとめています。

出来事が複数あるときの考え方

単独では「強」にならない出来事でも、複数が重なると「強」と評価されることがあります。関連して起きた出来事は最初の出来事の「その後の状況」として一体で評価され、無関係な「中」の出来事が近い時期に重なれば全体として強く評価されることもあります。一方、「中」が1つと「弱」がいくつかなら、全体も原則「中」です。

労災認定されないケースの例

裏返すと、次のような場合は労災と認められない可能性が高くなります。

  • 発病前おおむね6か月の出来事が、総合評価で「中」や「弱」にとどまる
  • 私生活での強い出来事や、個人の要因が発病の主な原因と判断される
  • 発病の時期が、問題とされる出来事より前だった
  • 認定基準の対象外の病気だった

実際、令和7年度に労災と認められたのは、決定件数3,839件のうち1,082件(認定率28.2%)でした。ただし結論は個別の事情しだいで、会社が「労災ではない」と決めつけることはできません。

精神障害の労災認定基準にみる長時間労働の目安

長時間労働は、評価表のなかでも数字で目安が示されている数少ない項目です。ここでいう時間外労働は、週40時間を超えて働いた時間を指します。自社の36協定の上限とは別の物差しなので注意しましょう。

極度の長時間労働:発病直前1か月におおむね160時間

発病直前の1か月におおむね160時間を超える時間外労働をした場合や、3週間におおむね120時間以上の時間外労働をした場合など、極度の長時間労働は「特別な出来事」として、それだけで「強」と判断されます。

長時間労働そのものを出来事として評価する目安

月80時間以上の時間外労働が生じた状況は、それ自体が具体的出来事として評価されます。目安は次のとおりです。

  • 1か月におおむね80時間以上の時間外労働:「中」
  • 発病直前の連続した2か月間に、1か月あたりおおむね120時間以上:「強」
  • 発病直前の連続した3か月間に、1か月あたりおおむね100時間以上:「強」
  • 仕事量が大きく増え、時間外労働がおおむね倍以上かつ月100時間以上になった:「強」になりうる

月100時間の「恒常的長時間労働」と他の出来事の組み合わせ

月おおむね100時間の時間外労働が続く状態は「恒常的長時間労働」とされ、ほかの出来事の評価を引き上げます。たとえば、それだけなら「中」の出来事でも、その後に恒常的長時間労働が続いていれば「強」と判断されます。

休日のない連続勤務

休日のない連続勤務も評価の対象です。2週間以上の連続勤務は「中」、1か月以上の連続勤務や、2週間以上の連続勤務の間に連日深夜まで時間外労働をした場合は「強」の例とされています。

なお、認定基準は、これらの時間数に届かなくても、時間数だけにとらわれずに判断するとしています。

精神障害の労災申請の流れと期間

社員が労災を申請すると、どのような手続きが進むのでしょうか。会社が関わる場面を中心に、大まかな流れを確認します。

請求は本人(または遺族)が労基署に行う

労災保険の請求は、本人(亡くなった場合は遺族)が、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に請求書を出して行います。休業中の補償を求める場合は休業補償給付支給請求書(様式第8号)、治療費については療養補償給付の請求書(様式第5号など)を使います。様式は厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーなどから入手できます。

本人が自分で手続きをするのが難しいときは、会社は手続きができるよう手助けしなければなりません(労働者災害補償保険法施行規則第23条第1項)。

請求には期限があり、休業補償給付や療養補償給付は2年、障害補償給付や遺族補償給付は5年で時効になります(労働者災害補償保険法第42条)。退職後でも、この期限内であれば請求できます。

労基署の調査と、会社への協力依頼

請求を受けた労基署は、主治医の意見を聞くとともに、本人や会社、上司・同僚などから話を聞き、労働時間や業務の状況を調べます。会社には、タイムカードなどの労働時間の記録、賃金台帳、業務内容がわかる資料の提出や、関係者の聞き取りへの協力が求められることがあります。

決定と、その後

調査の結果、労基署長が支給か不支給かを決めます。精神障害の事案は調べることが多く、決定まで数か月以上かかるのが一般的です。決定に不服がある場合、本人は労働局の労災保険審査官に審査請求ができます。

会社が労災申請を求められたときの対応

ここからは、社員から「労災を申請したい」「請求書の事業主証明を書いてほしい」と言われたときに、会社がどう動けばよいかを整理します。

事業主証明は「事実」を証明するもの

請求書には事業主が証明する欄があり、発病や休業の状況、賃金などを記入します。法令上、会社は、保険給付に必要な証明を求められたら、すみやかに証明しなければなりません(労働者災害補償保険法施行規則第23条第2項)。

押さえておきたいのは、業務上かどうかを判断するのは会社ではなく労基署だという点です。事業主証明は、会社として把握している事実を記入するもので、労災であると会社が認めることとは別だと考えられます。会社の把握している事実と、請求書に書かれた内容が違う部分があれば、その点を確認したうえで、次に説明する意見の申し出で伝えるのが一般的な対応です。

会社が証明を拒んでも請求はできる

厚生労働省のパンフレットでは、会社が事業主証明を拒否するなど証明が得られない場合でも労災請求はできる、と案内しています。拒んでも手続きは止まらず、社員との信頼関係を損ねて紛争を大きくするおそれがあります。

会社の見解は「意見の申し出」で伝える

会社として「業務が原因とは考えにくい」などの意見がある場合は、所轄の労基署長に書面で意見を申し出ることができます(同規則第23条の2)。根拠になる記録や経緯をそろえて、事実にもとづいて伝えましょう。

調査には記録をもとに正確に協力する

労基署は、会社に報告や文書の提出を命じることができ、命令に反して報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりすると罰則の対象になります(労働者災害補償保険法第46条、第51条)。労働時間の記録、ハラスメントの相談記録、面談記録などは、日ごろから正確に残しておくことが、会社を守ることにもつながります。

避けたい対応

次のような対応は、法令違反や紛争の原因になりやすいため避けましょう。

  • 「労災にすると会社に迷惑がかかる」などと言って、申請を思いとどまらせる
  • 証明を長く放置する、請求書を預かったまま出さない
  • 申請したことを理由に、配置や評価で不利に扱う
  • 調査に対して、記録を書き換えたり事実と違う説明をしたりする

労災と認められた場合に会社に生じること

労災と認められると、会社には次のような影響があります。

  • 療養のために休業している期間とその後30日間は、原則として解雇できない(労働基準法第19条)
  • 休業の最初の3日間は労災保険から給付されないため、会社が平均賃金の60%以上の休業補償を行う(労働基準法第76条)
  • 労災保険の給付とは別に、安全配慮義務違反として損害賠償を求められることがある

労災保険の給付は国が行うもので、会社の賠償責任がすべてなくなるわけではありません。会社の責任が問われる考え方は安全配慮義務とメンタル不調で問われる会社の責任で解説しています。休業に入った社員への対応は、休職の手続きを会社側の流れで解説した記事も参考にしてください。

なお、会社が労災の支給決定そのものの取消しを求めて裁判で争うことは認められていません(最高裁判所 令和6年7月4日判決)。一方、労災保険料の割増引きの対象になる会社は、保険料の決定について争う手続きのなかで、支給要件を満たしていないと主張する道があるとされています。実際の対応は、労基署や社会保険労務士・弁護士などの専門家に相談して判断してください。

労災申請への対応は、起きてから整えるより、ふだんの記録と相談体制が整っているかで大きく変わります。ハラスメントや長時間労働の相談を受け止め、社員が早い段階で専門家に話せる場を用意しておくことは、労災に至る前に手を打つための土台になります。社外の相談先づくりを検討する材料として、サービス資料をご用意しています。

資料ダウンロード

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精神障害の労災を防ぐために会社ができること

認定基準を読むと、会社の日ごろの動き方が評価を左右する場面が多いことがわかります。最後に、予防の観点から会社ができることを整理します。

労働時間を把握し、月80時間の手前で手を打つ

月80時間以上の時間外労働は、それだけで評価表の出来事になります。勤怠の記録で時間外労働が増えている人を早めに見つけ、業務の分担や応援体制を見直しましょう。応援体制がないことは、評価を強める要素にもなります。

ハラスメント・カスハラの相談を受けて動ける体制にする

パワハラもカスハラも、相談したのに会社が対応しなかったことが「強」の評価につながりえます。相談窓口を置き、受けた相談は記録し、事実確認と再発防止まで進める流れを決めておくことが大切です。

不調のサインに早く気づき、相談先を用意する

精神障害の多くは、ある日突然ではなく、遅刻や欠勤の増加、表情や口数の変化など、前ぶれを伴うことがあります。上司が気づいたときに声をかけ、必要に応じて医療機関や専門家につなげる流れを作っておきましょう。会社全体のメンタルヘルス対策の進め方は、職場のメンタルヘルス対策の4つのケアで体系的に整理しています。

ココロチェックで、労災になる前の不調に気づく

精神障害の労災認定基準では、強い心理的負荷があったか、そして職場がどう支え、どう対応したかが問われます。ただ、産業医や保健師がいない会社では、社員の不調に早く気づいたり、上司や人事に言いにくい悩みを受け止めたりする仕組みを、社内だけで用意するのは簡単ではありません。

ココロチェックは、産業保健の担当者がいない会社のための、法人向けメンタルヘルスサービスです。組織の状態を「測る」ところから、社員が専門家に相談して「癒す」ところまでを、一つのサービスで支えます。

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精神障害の労災認定基準のよくある質問

最後に、精神障害の労災について、人事・総務のご担当者からよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 精神障害の労災認定は難しいのですか?

令和7年度の認定率(決定件数に占める支給決定件数の割合)は28.2%でした。認定基準の3つの要件をすべて満たす必要があり、とくに発病前おおむね6か月に「強」と評価される出来事があったかが分かれ目になります。ただし、数字はあくまで全体の傾向で、個別の事案の見通しは労基署や専門家に相談してください。

Q. うつ病で労災申請されたら、会社側にデメリットはありますか?

申請されたこと自体で会社が罰せられることはありません。労災と認められた場合は、休業中とその後30日間の解雇制限や、最初の3日間の休業補償などが生じます。また、安全配慮義務違反として別に損害賠償を求められる可能性もあります。

Q. 会社が労災ではないと考える場合、証明を断ってもよいですか?

会社は、保険給付に必要な証明を求められたら、すみやかに証明する必要があります。業務上かどうかを決めるのは労基署なので、会社は把握している事実を記入し、見解がある場合は労基署長への意見の申し出で伝えるのが基本です。証明がなくても請求自体はできます。

Q. 退職した社員から労災を申請されることはありますか?

あります。労災保険の給付を受ける権利は、退職によって変わりません。休業補償給付などは2年、障害補償給付や遺族補償給付は5年の時効の範囲内であれば、退職後でも請求できます。

Q. 労災と傷病手当金は、どちらを使うのですか?

業務が原因の病気には、原則として健康保険は使えず、労災保険の対象になります。仕事以外が原因なら、健康保険の傷病手当金の対象です。労災の決定が出るまでの間の扱いは、加入している協会けんぽや健康保険組合、労基署に確認してください。

Q. パートや派遣社員も精神障害の労災の対象になりますか?

なります。労災保険は、雇用形態にかかわらず、雇われて働く人が対象です。派遣社員の場合は、原則として派遣元の会社の労災保険を使います。

まとめ:精神障害の労災認定基準は「事実」と「職場の対応」で判断される

精神障害の労災認定基準について、要点を振り返ります。

  • 精神障害の労災は、対象の精神障害の発病、発病前おおむね6か月の業務による強い心理的負荷、仕事以外の原因ではないこと、の3つの要件で判断される
  • 強さは心理的負荷評価表で「強・中・弱」を総合評価する。長時間労働の目安は月80時間・100時間・160時間で、相談しても会社が対応しなかったことは評価を強める
  • 労災申請を求められたら、会社は事実を証明して調査に協力し、見解は意見の申し出で伝える。判断するのは労基署で、個別の判断は専門家や労基署に相談する

認定基準は、労災かどうかを決めるルールであると同時に、会社がどこで手を打てば社員の不調を防げるかを示す地図でもあります。労働時間とハラスメントの相談、不調のサインへの気づきを日ごろから整えておきましょう。

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この記事を書いた人

はたらくこころ研究所 編集部のアバター はたらくこころ研究所 編集部 運営:株式会社remental

はたらくこころ研究所は、株式会社remental が運営する、職場のメンタルヘルスの情報メディアです。編集部では、産業医や保健師などの産業保健の担当者がいない会社で人事・総務・経営を担う方に向けて、ストレスチェック、休職・復職、ハラスメント対策、管理職のラインケアなどの実務をまとめています。
法令や制度に関する記事は、厚生労働省など公的機関が公表している情報をもとに作成し、制度の改正にあわせて見直しています。

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