ストレスチェックは意味ない?目的と効果を出す使い方

ストレスチェックは意味ない?目的と効果を出す使い方

「ストレスチェックなんて、正直やる意味ないのでは?」「毎年受けさせているけれど、何か変わった実感がない」。経営者や人事・総務のご担当者から、こうした本音を聞くことは少なくありません。2028年4月から50人未満の事業場にも義務が広がることで、「義務化しても意味ない手続きが増えるだけ」と感じている方もいるでしょう。

結論からいうと、ストレスチェックは受けさせただけでは意味が出にくく、結果を職場の改善に使ったときに効果が出る制度です。厚生労働省の調査や研究でも、集団分析と職場環境の改善まで進めた職場でストレスが下がったという結果が出ています。ストレスの面だけでなく働きがいの面から組織を見たい場合は、エンゲージメントサーベイと組み合わせる方法もあります。

ここでは「意味ない」と感じられる原因を一つずつ確かめ、制度の本来の目的と、小さな会社でも効果を出すための使い方を、公的な資料をもとに整理します。

この記事でわかること

  • ストレスチェックが「意味ない」「無駄」と言われる5つの理由
  • ストレスチェックの本来の目的と、「意味ない」と感じる原因
  • 厚生労働省の資料で示されている、ストレスチェックの効果
  • 集団分析から職場改善までの、効果を出す進め方
  • 産業医がいない小規模な会社が気をつけたいこと
目次

ストレスチェックが「意味ない」と言われる5つの理由

まずは、「意味ない」という声がどこから来るのかを整理します。多くの場合、制度そのものより、運用のしかたに原因があります。

受けさせただけで、結果が職場に返ってこない

もっとも多いのが、「実施して終わり」になっているケースです。従業員は質問票に答え、自分の結果を受け取ります。しかし会社として結果をどう使ったのかが見えなければ、従業員には「毎年同じアンケートに答えているだけ」に映ります。

経営者の側も、個人の結果は本人の同意なく見られないため、「何がわかったのか」が手元に残りません。双方にとって手ごたえがないまま、年1回の行事になってしまいます。

高ストレス者が面接指導を申し出ない

ストレスチェックで高ストレスと判定された人は、申し出れば医師の面接指導を受けられます。ところが、厚生労働省が令和3年に行った調査では、受検者に占める高ストレス者の割合は大半の事業場で5〜20%だった一方、高ストレス者のうち面接指導を申し出る人の割合は5%未満という事業場が多くなっていました。

面接を申し出ると、会社に「自分は高ストレスだった」と知られることになります。それを避けたい人が多いと考えられており、厚生労働省も、医師の面接指導だけに頼らない支援の必要性を指摘しています。

会社にバレるのが不安で、正直に答えてもらえない

「結果が上司に伝わって評価に響くのでは」と心配して、実際より軽めに答える従業員もいます。正直な回答が集まらなければ、結果の精度も下がり、「どうせあてにならない」という評価につながります。

実際には、会社は本人の同意なく個人の結果を見られませんし、受検の有無や結果を理由に不利益な扱いをすることも禁止されています。ただ、このルールが従業員に伝わっていなければ、不安は消えません。

年1回では、日々の変化をとらえられない

ストレスチェックは1年以内ごとに1回の実施です。異動や繁忙期、人間関係のトラブルなど、職場の状況は1年のあいだに大きく変わります。実施した時点では問題がなくても、その数か月後に不調を抱える人も出てきます。

年1回の結果だけで職場のすべてを把握しようとすると、「結果と実感がずれている」と感じやすくなります。

集団分析をしていない、見方がわからない

部署ごとなどに結果を集計する「集団分析」は、法律上は努力義務です。そのため、集団分析をしていない会社や、結果の資料を受け取っても読み方がわからず、そのままにしている会社も少なくありません。

厚生労働省が令和4年にまとめた資料でも、集団分析の結果を職場環境の改善に活用している事業場の割合は、4割に届かない水準で推移していました。ストレスチェックがいちばん役に立つ部分を使わないまま、「意味ない」と判断されているケースが多いといえます。

ストレスチェックの目的は「不調の発見」ではなく一次予防

「意味ない」と感じる背景には、ストレスチェックの目的についての思い違いもあります。ここで、制度が何のためにあるのかを確認しておきましょう。

ストレスチェックの目的は3つ

厚生労働省は、ストレスチェック制度の目的を、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」と位置づけています。具体的には、次の3つです。

  • 本人の気づき(セルフケア):従業員が自分のストレスの状態を知り、早めに対処するきっかけにする
  • 職場環境の改善:結果を集団で分析し、ストレスの原因になっている職場の環境を見直す
  • 高ストレス者への支援:高ストレスの人が医師の面接指導を受け、必要に応じて働き方を調整する

一次予防とは、不調になる前に手を打つこと

職場のメンタルヘルス対策は、目的によって3つの段階に分けられます。

  • 一次予防:メンタルヘルス不調を未然に防ぐ
  • 二次予防:不調を早く見つけて、適切に対応する
  • 三次予防:休職した人の職場復帰を支援する

ストレスチェックは、このうち一次予防のための制度です。病気を見つける健康診断のようなものと考えると、「不調者が見つからないから意味ない」「受けても何も起きない」と感じやすくなります。

「意味ない」と感じる原因は、目的とのズレ

本来の目的に照らすと、ストレスチェックの成果は「何人の不調者を見つけたか」ではありません。「従業員が自分のストレスに気づけたか」「ストレスの原因になっている職場の課題を見つけ、手を打てたか」で測るものです。

つまり、受検させて個人に結果を返すところで止まっていると、目的の半分以上が手つかずのままになります。「意味ない」という感覚は、多くの場合このズレから生まれています。

ストレスチェック義務化は意味ない?公的資料で示されている効果

「義務化しても意味ない」と考える経営者に向けて、厚生労働省の検討会や報告書で示されている効果を紹介します。数字で見ると、どこまでやれば効果が出るのかがわかります。

事業場と従業員が感じている効果

厚生労働省が令和3年に全国の事業場と労働者を対象に行った調査では、ストレスチェック制度の効果として、次のような回答が上位に挙がりました。

  • 事業場:「社員のセルフケアへの関心度の高まり」53.1%
  • 事業場:「メンタルヘルスに理解のある職場風土の醸成」27.8%
  • 労働者:「自身のストレスを意識することになった」50.2%

受けるだけでも、従業員が自分のストレスに目を向けるきっかけにはなっていることがわかります。

集団分析と職場改善まで進めると、ストレス反応が下がる

効果がよりはっきり出ているのは、集団分析と職場環境の改善まで進めた場合です。厚生労働省の検討会資料では、次のような研究結果が紹介されています。

  • ストレスチェックの受検と職場環境の改善の両方を経験した労働者は、どちらも経験していない労働者に比べて、1年後のストレス反応が有意に低下していた
  • ストレスチェックを受け、職場環境の改善があったと答えた労働者は、受検していない労働者に比べて、仕事の生産性の自己評価が向上していた
  • 継続してストレスチェック制度に取り組んだ建設業の会社では、管理職からの相談が早くなるなど職場の風土が変わり、メンタルヘルス不調者が実施前の5分の1に減った

労働者約100人の製造・卸売業の事例もあります。産業保健総合支援センターの専門家の助言を受けながら、残業時間などのデータとあわせて集団分析の結果を読み、経営層と現場で改善策を話し合いました。その結果、上司からの支援などの数値が改善したと報告されています。大企業だけの話ではない点は、中小企業にとって心強い材料です。

高ストレス者は、休業や離職のリスクが高い

ストレスチェックの質問票(職業性ストレス簡易調査票)で高ストレスと判定された人は、その後に休業や離職をしやすいことも研究で示されています。

  • 1年間追跡した研究では、高ストレス者が1か月以上の病気休業をするリスクは、そうでない人に比べて男性で約6.6倍、女性で約2.8倍だった
  • 約3年間追跡した研究では、高ストレス者が離職するリスクは、男性で約2.9倍、女性で約1.5倍だった

人手の限られた中小企業では、1人の休職や退職が業務に与える影響は大きくなります。ストレスチェックの結果は、こうしたリスクに早めに気づくための材料にもなります。

義務化後は「やらない」という選択肢はない

2028年4月1日からは、従業員50人未満の事業場もストレスチェックの実施が義務になります。実施しないこと自体への罰則はありませんが、是正指導の対象になるほか、従業員が不調になった際に、会社が安全配慮義務を果たしていたかが問われる場面も考えられます。

どうせ実施するなら、手間をかけた分の見返りがある形で運用するほうが合理的です。施行日や対象の数え方、罰則の扱いは、ストレスチェック義務化はいつから?50人未満の対象・罰則・準備にまとめています。

ストレスチェックを意味あるものにする進め方

ここからは、ストレスチェックを「意味ある」ものにするための進め方を、順番に紹介します。特別な体制がなくても、運用の工夫で変えられることが多くあります。

ステップ1:目的と結果の扱いを社内に伝える

実施の前に、経営者から「何のためにやるのか」と「結果をどう扱うのか」を伝えます。特に次の3点は、はっきり言葉にしておきましょう。

  • 目的は職場をよくすることで、個人を評価するためではない
  • 個人の結果は本人の同意なく会社に伝わらない
  • 受けないことや結果を理由に、不利益な扱いはしない

ステップ2:受検率を上げる

受検する人が少ないと、職場の傾向を正しくつかめません。勤務時間内に受けられるようにする、回答の期間に余裕を持たせる、昨年の結果をもとに何を変えたかを伝える、などの工夫で受検率は上がりやすくなります。

ステップ3:集団分析で職場の傾向を見る

部署やチームごとに結果を集計し、仕事の量、仕事の裁量、上司や同僚からの支えなどの傾向を確認します。全国平均と比べて負担が高い項目や、前年から悪化した項目に注目すると、課題が絞りやすくなります。

数値の見方や10人未満の集団の扱いは、ストレスチェックの集団分析の見方と活用手順を参考にしてください。

ステップ4:改善策を1つに絞って実行する

課題が見えたら、管理職や従業員と話し合い、まずは取り組みやすい改善策を1つ決めて実行します。会議の時間を短くする、業務の分担を見直す、困ったときの相談ルートを決める、といった小さなことで構いません。

厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」では、職場改善のためのヒント集など、無料で使える職場環境改善ツールが公開されています。何から手をつけるか迷ったときの参考になります。

ステップ5:面接指導以外の相談先も用意する

高ストレスでも、医師の面接指導を申し出る人はごくわずかです。会社に知られずに話せる相談窓口を用意し、結果の通知とあわせて案内しておくと、早い段階で支援につながる人が増えます。窓口をつくっても使われない会社は、社内相談窓口が使われない理由と改善策もあわせて確認してみてください。

申し出があった場合に会社が進める手順は、高ストレス者が出たときの面接指導の手順で確認できます。

ステップ6:翌年の結果で振り返る

改善策を実行したら、翌年のストレスチェックの結果で変化を確認します。数字が良くなった項目は続け、変わらなかった項目はやり方を見直します。この繰り返しによって、ストレスチェックが「毎年の行事」から「職場をよくする仕組み」に変わっていきます。

この6つのステップのうち、人事担当者ひとりで続けるのが難しいのは、面接以外の相談先の用意と、年1回のあいだの職場の変化をつかむことです。外部のサービスでどこまで補えるかを、先に確かめておくと進めやすくなります。

資料ダウンロード

結果を職場の改善と相談につなぐ。ココロチェックの資料

小規模な会社でストレスチェックを活かすときの注意点

従業員30〜100人ほどの会社では、大企業と同じやり方がそのまま使えない場面もあります。効果を出すうえで、特に気をつけたい点をまとめます。

10人未満の集団の結果は受け取らない

人数の少ない集団で集計すると、誰の回答かが推測できてしまいます。厚生労働省のマニュアルでは、受検者が10人を下回る集団の分析結果は、対象者全員の同意がない限り、原則として会社に提供しないこととされています。部署が小さい会社は、いくつかの部署をまとめて集計する、全社単位で傾向を見るなどの工夫をしましょう。

結果を「犯人探し」に使わない

集団分析で数値の悪い部署が見つかると、その部署の管理職を責めたくなるかもしれません。しかし、責める材料に使うと、翌年から正直な回答が集まらなくなります。結果は、職場全体で改善を考えるための材料として扱うことが大切です。

外部の専門家と公的な支援を頼る

産業医や保健師がいない会社では、結果の読み方や改善策の立て方に迷うこともあります。各都道府県の産業保健総合支援センターでは、メンタルヘルス対策の専門家による無料の訪問支援を受けられます。

また、厚生労働省のストレスチェック制度・メンタルヘルス対策のページでは、実施マニュアルや「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」などの資料がまとめられています。小規模な事業場の事例も載っているので、一度目を通しておくと進め方のイメージがつかみやすくなります。

ココロチェックで、ストレスチェックを「意味ある」ものに

ストレスチェックを意味あるものにする鍵は、結果を見て職場を改善することと、困っている社員を相談につなげることです。ただ、どちらも人事担当者ひとりで抱えるには負担が大きい作業です。

ココロチェックは、産業保健の担当者がいない会社のための、法人向けメンタルヘルスサービスです。組織の状態を「測る」ところから、社員が専門家に相談して「癒す」ところまでを、一つのサービスで支えます。

  • 組織の状態を測る:設問に答えるだけで、組織の状態と部署ごとの傾向がわかる組織診断を無料で用意しています。年1回のストレスチェックのあいだに、職場の変化を確かめる材料になります
  • 社員の相談先になる:公認心理師・臨床心理士などの専門家に、オンラインで1回30分から相談できます。医師の面接を申し出にくい人の受け皿になります
  • 人事に個人の情報は渡さない:会社が見られるのは組織単位の傾向だけで、誰が相談したかは本人の同意なく伝わりません

「うちの会社の状態はどうなのか」を知るところから始めてみませんか。まずは無料の組織診断で、職場の傾向を確かめてみてください。

年1回のあいだも職場の変化を無料で確認

設問に答えるだけで、組織の状態と部署ごとの傾向がわかります。ストレスチェックの結果とあわせて、職場改善の手がかりにお使いください。

ストレスチェックの意味についてよくある質問

最後に、ストレスチェックの意味や目的について、経営者や人事・総務のご担当者からよく寄せられる質問にお答えします。

Q. ストレスチェックは何のためにやるのですか?

メンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」が目的です。従業員が自分のストレスに気づくこと、集団分析をもとに職場環境を改善すること、高ストレスの人を医師の面接指導などの支援につなげることの3つが柱です。

Q. ストレスチェックの結果は会社にバレますか?

会社は、本人の同意がない限り個人の結果を見られません。結果は実施者から本人に直接届けられます。ただし、高ストレスと判定された人が医師の面接指導を申し出た場合は、その申し出をもって、結果を会社に提供することに同意したものとして扱ってよいとされています。申し出る前に、この点を本人に伝えておくことが大切です。

Q. ストレスチェックで正直に答えないとどうなりますか?

本当の状態より軽く答えると、本人が自分の不調に気づきにくくなり、必要な支援を受ける機会を逃すおそれがあります。会社にとっても、集団分析の結果が実態からずれ、職場の課題を見落とす原因になります。正直に答えてもらうには、結果の扱いを事前に丁寧に説明することが欠かせません。

Q. ストレスチェック後の産業医面談は意味ないのですか?

医師の面接指導は、高ストレスの人の状態を医師が確かめ、残業の制限や業務の調整など、会社がとるべき措置について意見を出すためのものです。本人が話して終わりではなく、医師の意見をもとに会社が働き方を見直すところまで進めて、はじめて意味を持ちます。面接のあとに措置を検討しないまま終わると、「面談しても何も変わらない」と受け取られやすくなります。

Q. ストレスチェックをやらないとどうなりますか?

実施しないこと自体への罰則はありませんが、義務の対象であれば労働基準監督署の是正指導の対象になります。50人以上の事業場が労基署への報告を怠った場合は、50万円以下の罰金の対象です。また、従業員が不調になった際に、安全配慮義務の面で会社が不利になるおそれがあります。

Q. 50人未満の小さな会社でもストレスチェックに意味はありますか?

あります。小さな会社ほど、1人の休職や退職の影響が大きくなるため、不調の兆しに早く気づく意味は大きいといえます。人数が少なく部署ごとの集団分析が難しい場合は、全社まとめて傾向を見る、公的な支援や外部のサービスを使うなどの工夫で活用できます。

まとめ:ストレスチェックが意味ないかどうかは、結果の使い方で決まる

ストレスチェックが「意味ない」と言われる理由と、効果を出す使い方について、要点を振り返ります。

  • ストレスチェックが意味ないと感じられる主な原因は、受検だけで終わり、集団分析や職場改善まで進んでいないこと
  • 制度の目的は不調者を見つけることではなく、従業員の気づきと職場環境の改善による一次予防
  • 集団分析と職場改善まで進めた職場では、ストレス反応の低下などの効果が報告されている

義務化で実施が避けられないからこそ、「やらされる手続き」で終わらせず、職場をよくするための材料として使っていきましょう。まずは自社の今の状態を知ることが、その第一歩です。

結果を活かす第一歩に、無料の組織診断

ストレスチェックを意味あるものにするために、まず自社の職場の傾向を部署ごとに確かめてみませんか。個人は特定されません。

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この記事を書いた人

はたらくこころ研究所 編集部のアバター はたらくこころ研究所 編集部 運営:株式会社remental

はたらくこころ研究所は、株式会社remental が運営する、職場のメンタルヘルスの情報メディアです。編集部では、産業医や保健師などの産業保健の担当者がいない会社で人事・総務・経営を担う方に向けて、ストレスチェック、休職・復職、ハラスメント対策、管理職のラインケアなどの実務をまとめています。
法令や制度に関する記事は、厚生労働省など公的機関が公表している情報をもとに作成し、制度の改正にあわせて見直しています。

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