「ストレスチェックの担当になったけれど、何から始めればいいのか分からない」。人事や総務を一人で担っている方から、よく聞く声です。
ストレスチェックの流れは、大きく「準備」「実施」「事後対応」の3段階に分かれます。2028年4月1日からは従業員50人未満の事業場も実施が義務になります。それに先立ち、2026年2月25日には小規模な事業場向けの手引きとして「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」が厚生労働省から出されています。義務化の全体像はストレスチェック義務化はいつから?50人未満の対象・罰則・準備で確認できます。
この記事では、このマニュアルの要点を10のステップに落とし込み、準備から結果の通知、面接指導、集団分析までを順番どおりに整理しました。各ステップにチェック欄を付けているので、作業のたびに開いて確認しながら進めてください。
この記事でわかること
- ストレスチェックの流れの全体像と、10のステップ
- 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルの要点
- 50人未満の事業場でのストレスチェックの実施方法とやり方
- 結果通知や同意の取り方など、つまずきやすい注意点
- 初めての実施に向けた年間スケジュールの例
ストレスチェックの流れは「準備・実施・事後対応」の3段階
最初に、ストレスチェックの流れの全体像をつかんでおきましょう。いま自分がどの段階にいるのかが分かると、次にやることが見えやすくなります。
ストレスチェックの流れ図(10ステップの全体像)
厚生労働省のマニュアルの構成をもとに、会社がやることを10のステップにまとめると次のとおりです。
- 準備1:方針を表明する
- 準備2:従業員の意見を聞く
- 準備3:社内ルールを決めて周知する
- 準備4:実務担当者を決め、委託先を選ぶ
- 準備5:面接指導の依頼先、実施時期、対象者、調査票を決める
- 実施6:実施を予告し、調査票を配布・回収する
- 実施7:結果を本人に通知する
- 事後8:面接指導の申出を受け、医師の面接を手配する
- 事後9:医師の意見を聞き、就業上の措置を決める
- 事後10:集団分析と職場環境の改善、記録の保存
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルとは
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルは、厚生労働省が2026年2月25日に公表した、従業員50人未満の事業場向けの実施マニュアルです。「労働者のプライバシーが保護される体制」「小規模事業場に即した内容」「現実的で実効性のある実施方法」の3点を特徴としています。
本文のほか、そのまま使える「ストレスチェック制度実施規程(モデル例)」や、委託先に書いてもらう「サービス内容事前説明書(モデル例)」、職業性ストレス簡易調査票も巻末に載っています。原本は厚生労働省の公表ページから読めます。
50人以上と50人未満で流れはどこが違うか
基本の流れは同じですが、50人未満の事業場では次の点が異なります。
- 外部委託が原則:プライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施は外部機関への委託が推奨されている
- 意見を聞く場:衛生委員会がないため、関係する従業員の意見を聞く機会で代える
- 面接指導の依頼先:産業医がいないため、地域産業保健センターや委託先に頼む
- 労基署への報告:50人以上は報告が義務だが、50人未満は不要
施行日は2028年4月1日で、それまでは努力義務の扱いです。
準備段階:ストレスチェックの実施方法を決める
準備段階は、流れ全体でいちばん時間がかかるところです。ここで決めたことが、従業員の安心を左右します。
ステップ1:方針を表明する
まず経営者が「ストレスチェックを導入する」という方針を示します。目的はメンタルヘルス不調の未然防止であり、不調の人を見つけるためのものではないこと、個人の結果は本人の同意なく会社に伝わらないことを、はっきり伝えるのがポイントです。
マニュアルには、従業員向けメッセージの例が載っています。それを参考にした文面の例です。
- 従業員の皆さんの心の健康を守り、いきいきと働ける職場をつくるため、法律にもとづくストレスチェックを実施します
- 個人の結果は実施者から本人に直接届き、本人の同意なく会社が知ることはありません
- 業務時間中に受けられるよう、管理者は配慮してください
- 面接指導を申し出たことや、その結果を理由に不利益な扱いをすることは一切ありません
このステップのチェック- □ 経営者の名前で方針を出した- □ 「結果は会社に渡らない」ことを明記した- □ 業務時間中に受検できることを伝えた
ステップ2:従業員の意見を聞く
実施体制や実施方法について、関係する従業員の意見を聞きます。50人以上の事業場は衛生委員会で話し合いますが、50人未満の事業場は、労働安全衛生規則第23条の2にもとづく「関係労働者の意見を聴く機会」を使います。
会議体をつくる必要はありません。定例ミーティングや朝礼の場を使う、社内ルールの案を先に作って社内に示し意見を募る、といった方法でかまいません。マニュアルでは、衛生推進者や安全衛生推進者を中心に進めることが望ましいとされています。
このステップのチェック- □ 意見を聞く場(会議・朝礼・回覧など)を決めた- □ 社内ルールの案を見せて意見を集めた- □ 出た意見と対応を記録した
ステップ3:社内ルールを決めて周知する
意見をふまえて、ストレスチェックの社内ルールを決めます。マニュアルが挙げる項目は次の6つです。
- 実施体制(委託先、実務担当者、面接指導を担当する医師)
- 実施方法(時期、対象者、調査票、結果の通知方法、面接指導の申し出方)
- 記録の保存(何を、どこで、5年間保存するか)
- 情報管理(個人の結果を誰が扱い、会社は何を知るか)
- 情報の開示、訂正、苦情の窓口
- 不利益な取扱いの防止
規程にする場合は、マニュアル巻末のモデル例を自社に合わせて直すと早く仕上がります。決めたルールは、掲示や配布で全員に知らせます。
このステップのチェック- □ 6つの項目を決めた- □ 規程(またはルール文書)を作った- □ 全従業員に周知した
ステップ4:実務担当者を決め、委託先を選ぶ
社内では、委託先との連絡や実施計画の管理をする「実務担当者」を決めます。従業員10人以上50人未満の事業場では、衛生推進者または安全衛生推進者を充てることが望ましいとされています。10人未満の事業場では、経営者自身が担うことも考えられます。
外部委託の場合、個人の結果などの健康情報は委託先の中で扱われ、社内には入りません。そのため、マニュアルでは人事権を持つ人を実務担当者にすることも可能とされています。ここは、個人の結果を扱う「実施事務従事者」とは別の役割なので、混同しないようにしましょう。
委託先を選ぶときは、候補の外部機関に「サービス内容事前説明書」を作って出してもらい、実施体制、実施方法、料金体系、面接指導、情報管理の5点を比べます。費用の目安と比べ方は、ストレスチェックの外部委託の費用相場と選び方で紹介しています。
このステップのチェック- □ 実務担当者を決め、社内に名前を知らせた- □ 委託先候補からサービス内容事前説明書を受け取った- □ 実施者が必要な資格を持つことを確かめた- □ 個人の結果の保存を委託内容に入れた
ステップ5:面接指導の依頼先、実施時期、対象者、調査票を決める
委託先と並行して、高ストレス者の医師面接をどこに頼むかを決めます。主な選択肢は、委託先が用意する面接指導と、地域産業保健センターです。50人未満の事業場は、地域産業保健センターで医師の面接指導を無料で受けられます。ただし、申し込むのは面接の対象者が決まってからなので、地域産業保健センターの申込手順を見て、窓口と申込方法を先に確認しておきます。
実施時期は「1年以内ごとに1回」です。集団分析をするなら、同じ集団は同じ時期に受けるのが望ましく、健康診断と合わせる場合は時期の調整が必要になります。対象者は、期間の定めのない契約か1年以上働く予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上の人です。パートや派遣社員、休職者の扱いに迷ったら、ストレスチェックの対象者の線引きで確かめてください。
調査票は、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)が基本です。23項目の簡略版もありますが、集団分析が細かくできない点に注意します。高ストレス者の選び方は、厚生労働省が示す基準をもとに、実施者の提案をふまえて決めます。
このステップのチェック- □ 面接指導の依頼先を決めた- □ 実施月を決めた- □ 対象者の名簿を作った- □ 調査票(57項目か23項目か)と、紙かWebかを決めた
実施段階:調査票の配布から結果の通知まで
準備が整ったら、いよいよストレスチェックの実施です。この段階は委託先が中心になりますが、社内の予告や受検の呼びかけは会社の仕事として残ります。
ステップ6:実施を予告し、調査票を配布・回収する
実施の前に、実務担当者から社内に予告します。予告に入れる項目は、実施時期、委託先の名前、調査票の配り方と集め方、受検を呼びかける方法です。
調査票の配布と回収は委託先が行います。Webで答えてもらう方法と紙の調査票を配る方法があります。社用メールがない職場では、紙のほうが合う場合もあります。
未受検の人への呼びかけは、委託先にしてもらうか、会社が受検者リストをもらって行います。従業員に受検の義務はないので、業務命令のように強制してはいけません。
このステップのチェック- □ 実施の予告を出した- □ 業務時間中に受けられるよう管理者に伝えた- □ 未受検者への呼びかけ方法を決めた
ステップ7:結果を本人に通知する
結果は、実施者から本人に直接、ほかの人に内容が分からない形で通知されます。必ず通知する内容は、ストレスプロフィール、高ストレスかどうかの評価、面接指導が必要かどうかの評価です。セルフケアのアドバイスや、面接以外の相談窓口もあわせて知らせることが望ましいとされています。
密封した封筒を会社経由で配ることは差し支えありません。ただし、面接指導の対象者にだけ封筒を配ると、周囲に対象者だと気づかれるおそれがあります。全員の封筒に案内を同封する、メールで知らせるなどの工夫が必要です。
このステップのチェック- □ 結果が本人に直接届く方法になっている- □ 面接対象者が周りに分からない通知方法にした- □ 相談窓口の案内を結果に添えた
事後対応:面接指導・就業上の措置・集団分析
結果を通知したあとが、ストレスチェックの流れの後半です。面接指導の申出があれば会社は必ず対応する必要があり、期限もあるので、事前に手順を確認しておきましょう。
ステップ8:面接指導の申出を受け、医師の面接を手配する
高ストレスで面接指導が必要とされた人から申出があれば、会社は医師による面接指導を行う義務があります。50人以上の事業場では、この医師面談(いわゆる産業医面談)を産業医が担うのが一般的です。厚生労働省の導入マニュアルでは、申出は結果の通知から1か月以内、面接指導は申出から1か月以内に行う必要があるとされています。
面接を担当する医師には、次のような情報を事前に渡します。
- 氏名、性別、年齢、部署、役職
- 個人のストレスチェック結果(封をしたまま取り寄せるか、本人が持参)
- 実施前1か月間の労働時間、労働日数、深夜業の回数、業務内容
- 健康診断の結果
- 実施時期が繁忙期だったかどうか
申出をしたことは会社に伝わるので、そのことを事前に本人に知らせておきます。日時はなるべく就業時間内に、場所はプライバシーに配慮して決めます。申し出の受け付けから医師の手配、就業上の措置まで、面接指導の流れは高ストレス者が出たときの面接指導の手順で詳しく追っています。
このステップのチェック- □ 申出の窓口と申出書を用意した- □ 申出から1か月以内に面接日を決めた- □ 医師に渡す情報をそろえた
ステップ9:医師の意見を聞き、就業上の措置を決める
面接のあと、遅くとも1か月以内に医師から意見を聞きます。意見書には「通常勤務」「就業制限」「要休業」のいずれかの区分と、残業の制限や業務の調整といった措置の内容が書かれます。
措置を決めるときは、本人の意見を聞き、了解を得られるよう話し合います。上司には、プライバシーに配慮しながら措置の目的と内容を説明します。診断名や検査の数値など詳しい医学的な情報は、会社が医師に求めてはいけません。
面接指導の結果の記録は、5年間の保存が義務です。必要な項目がそろっていれば、医師からの報告書をそのまま保存してもかまいません。
このステップのチェック- □ 面接から1か月以内に医師の意見を聞いた- □ 本人と話し合って措置を決めた- □ 面接指導の記録を5年保存する場所を決めた
ステップ10:集団分析と職場環境の改善、記録の保存
部署などの集団ごとに結果を集計・分析し、職場環境の改善につなげます。これは努力義務ですが、ストレスチェックを「実施しただけ」で終わらせないための大切な工程です。
小規模な会社で注意したいのが、集団の人数です。10人を下回る単位では個人が特定されるおそれがあるため、原則として集団分析の結果を受け取ってはいけません。この10人は在籍人数ではなく、実際の受検者数で数えます。少人数の会社は、会社全体で一つの集団にするのが現実的です。結果の読み方と改善までの進め方は、ストレスチェックの集団分析の見方と活用手順が参考になります。
このステップのチェック- □ 分析する集団が10人以上か確かめた- □ 結果を経営者と管理者で共有した- □ 改善策を一つ決めて実行した- □ 集団分析の結果を5年保存した
10のステップを終えても、面接を申し出なかった高ストレスの人の相談先と、次の実施までの職場の変化をつかむ手段は、社内だけでは用意しにくいところです。委託先選びとあわせて、外部のサービスで補える範囲を確かめておくと、流れの最後まで抜けなく準備できます。
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結果通知の後の相談先まで。ココロチェックのサービス資料
ストレスチェック義務化 50人未満のやり方:年間スケジュールの例
初めて実施する50人未満の会社を想定した目安です。委託先選びや社内の調整には時間がかかるので、実施月から逆算して動きましょう。
実施月の4〜6か月前:方針と委託先を決める
- 経営者と相談して方針を決め、実務担当者を決める
- 委託先の候補を2〜3社に絞り、サービス内容事前説明書を受け取る
- 面接指導の依頼先として、地域産業保健センターの窓口を確認する
実施月の2〜3か月前:ルールを決めて周知する
- 社内ルールの案を作り、従業員の意見を聞く
- 委託先と契約し、実施時期と調査票を確定する
- ルールを全従業員に周知する
実施月:予告、受検、結果の通知
- 2〜3週間前に実施を予告する
- 受検期間中に未受検者へ呼びかける
- 委託先から本人に結果を通知する
実施月の1〜3か月後:面接指導と集団分析
- 申出があれば1か月以内に面接指導を行い、医師の意見をもとに措置を決める
- 集団分析の結果を受け取り、改善策を話し合う
- 実施状況をふり返り、翌年のルールを見直す
ストレスチェックの流れでつまずきやすい注意点
手順どおりでも、情報の扱い方でつまずくことがあります。ひとり人事の会社で起きやすい点です。
結果を会社が受け取る同意は「通知の後」に取る
個人の結果を会社が受け取るには本人の同意が必要で、その同意は結果の通知後に取ります。受検の前や、回答と同時にまとめて同意を取る方法は認められていません。外部委託の場合は、そもそも会社が個人の結果を受け取らない運用が基本です。
自社で実施すると負担とリスクが大きい
外部委託をせず自社で実施することもできますが、社内に医師や保健師などの実施者を置き、個人の結果を扱う実施事務従事者を選ぶ必要があります。社長や人事部長など人事権を持つ人は、この事務に関われません。マニュアルでも、小規模事業場では人間関係が近く、「会社に結果を知られるのでは」という不安が生まれやすいと注意されています。
面接を申し出ない高ストレス者を放っておかない
面接指導を受けるかどうかは本人の選択です。申し出なかった人が高ストレスのまま放っておかれないよう、マニュアルでは面接以外の相談窓口を案内することが重要とされています。厚生労働省の「こころの耳」には、電話・SNS・メールの無料相談窓口があります。会社に知られずに相談できるかどうかも、窓口を選ぶときに確かめておきましょう。
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ストレスチェックの流れのよくある質問
最後に、ストレスチェックの流れや実施方法について、担当者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. ストレスチェックの流れを教えてください
大きく「準備」「実施」「事後対応」の3段階です。方針とルール、委託先と面接指導の依頼先を決め、調査票の回収と本人への結果通知を行い、最後に面接指導、就業上の措置、集団分析を行います。
Q. 50人未満の事業場はストレスチェックをどうやって実施すればいいですか?
厚生労働省の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」では、外部機関への委託が推奨されています。社内では実務担当者を決めて委託先との調整を担い、医師の面接指導は地域産業保健センターや委託先に頼むのが基本の形です。労基署への報告は不要ですが、面接指導の記録は5年間保存します。
Q. 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルはどこで入手できますか?
厚生労働省のホームページで無料で公開されています。働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、マニュアルの概要版や周知用のリーフレットも案内されています。
Q. ストレスチェックの実施時期はいつがよいですか?
法律で決まっているのは「1年以内ごとに1回」で、月は会社が決められます。集団分析をするなら同じ集団は同じ時期に受けることが望ましく、健康診断と合わせて実施する方法もあります。
Q. ストレスチェックの結果を会社が見ることはできますか?
本人の同意がない限り、会社は個人の結果を見られません。同意は結果の通知後に取る必要があります。同意がなくても会社が受け取れるのは、受検者10人以上の集団の分析結果です。また、面接指導を申し出た人については、その申し出をもって結果の提供に同意したものとみなしてよいとされており、面接指導の結果と医師の意見も会社が受け取ります。
まとめ:ストレスチェックの流れは「準備」に時間をかける
ストレスチェックの流れについて、要点を振り返ります。
- ストレスチェックの流れは「準備・実施・事後対応」の3段階、10のステップで進める
- 50人未満の事業場は、小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルにそって外部委託を基本にし、面接指導の依頼先も先に決めておく
- 結果は本人に直接通知し、会社が個人の結果を受け取る同意は通知の後に取る
ストレスチェックは、手順どおりに実施すること自体よりも、従業員が安心して正直に答えられることが大切です。チェック欄を使って一つずつ確かめながら、結果を相談先や職場の改善につなげる流れまで準備しておきましょう。
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ストレスチェックの流れを始める前に、職場のストレスの傾向を部署ごとに確かめられます。会社が見られるのは組織単位の傾向だけです。
