カスハラ対策の義務化で企業がやること7つの手順

カスハラ対策の義務化で企業がやること7つの手順

「カスハラ対策の義務化が始まったけれど、うちはまだ何も決めていない」「小さな会社でも、相談窓口まで用意しないといけないの?」。施行の日を迎え、こう感じている経営者や人事・総務のご担当者は少なくないはずです。

改正された労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、カスハラ(カスタマーハラスメント)対策が、労働者を雇うすべての事業主の義務になりました。従業員50人未満の会社も、業種を問わず対象です。措置をとらないこと自体への刑事罰はありませんが、行政の助言・指導・勧告や、勧告に従わない場合の公表の対象になります。まだ準備ができていない会社は、「方針」「相談窓口」「現場の対処ルール」の3つから先に整えるのが近道です。

この記事では、厚生労働省の指針をもとに、義務の中身と、まだ整っていない会社が今日から進める手順を解説します。

この記事でわかること

  • カスハラ対策の義務化の根拠法、施行日、カスハラの定義(3つの要素)
  • 50人未満の会社も対象か、罰則・勧告・公表はあるか
  • 指針が求める措置を、小さな会社向けの7つの手順に落とした進め方
  • カスハラの相談窓口のつくり方と、被害を受けた社員のメンタルケア
  • 就活生へのセクハラ防止の同時義務化、東京都の条例と奨励金、業種別マニュアルの探し方
目次

カスハラ対策の義務化とは?2026年10月1日施行の改正法

まず、根拠となる法律と、法律上の「カスハラ」の意味を確認します。ここがあいまいだと、社内ルールの線引きもぶれてしまいます。

カスハラ義務化の根拠法と施行日

根拠は、2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法です。改正後の第33条第1項で、事業主は、顧客などの言動によって労働者の就業環境が害されないよう、相談に応じて適切に対応する体制の整備や、抑止のための措置などの「雇用管理上必要な措置」を講じなければならない、と定められました。

具体的な中身は、厚生労働省が定めた「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号、以下「指針」)に書かれています。施行日は2026年10月1日です。最新の情報は厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」で確認できます。

カスハラが義務化された背景

これまでカスハラ対策は、パワハラ防止指針の中で「望ましい取組」とされるにとどまっていました。しかし、厚生労働省の委託で行われた令和5年度の「職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に顧客などから著しい迷惑行為を受けた労働者は10.8%にのぼり、パワハラ(19.3%)に次ぐ多さでした。パワハラ・セクハラなどを含めた会社の義務の全体像は、ハラスメント対策で企業がやることで整理しています。

被害が心身の不調や離職につながることもあるため、現場の努力任せにせず、事業主の責任として法律に位置づけたのが今回の義務化です。

カスハラの定義(3つの要素)

指針は、職場におけるカスハラを、次の3つの要素がそろったものとしています。

  • 職場で行われる、顧客、取引先、施設の利用者など、事業に関係がある人(顧客等)の言動であること
  • 労働者が担う業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えた言動であること
  • その言動によって、労働者の就業環境が害されること

2つ目の「許容される範囲を超えた」は、要求の内容が契約内容から見て相当性を欠く場合と、要求の手段や態様が相当でない場合の両方を指します。どちらか一方だけでも該当し得るとされています。

指針が挙げる典型例は次のようなものです。

  • 要求の内容が行き過ぎている例:商品と無関係な要求、契約を著しく超えるサービスの要求、契約金額の著しい減額の要求、不当な損害賠償の要求
  • 手段や態様が行き過ぎている例:暴行、脅迫や暴言、土下座の強要、無断での撮影、大声での威圧、同じ質問やメールの執拗な繰り返し、長時間の居座りや電話での拘束

電話やメールに加え、社員のプライバシーに関わる情報をSNSに投稿する、悪評の書き込みをほのめかして脅す、といったネット上の言動も指針の例に挙がっています。

正当なクレームとの線引き

指針は、顧客からの苦情がすべてカスハラになるわけではないと明記しています。社会通念上許容される範囲の苦情は「正当な申入れ」であり、カスハラではありません。

会社側の不適切な対応が顧客の言動を招いている場合もあります。カスハラ対策は「正当な声には誠実に応え、行き過ぎた言動からは社員を守る仕組み」だと説明すると、社内の理解も得やすくなります。

カスハラ対策は企業の義務?50人未満・中小企業も対象

続いて、自社が対象になるのか、対応しないとどうなるのかを整理します。ストレスチェックのような人数の区切りはありません。

規模や業種を問わず、すべての事業主が対象

カスハラ対策の義務は、労働者を1人でも雇っている事業主すべてにかかります。従業員50人未満の会社も、10人の会社も対象で、中小企業向けの猶予期間もありません。

店舗や窓口がないBtoBの会社でも、取引先からの過大な要求や執拗な電話・メールは起こり得ます。条文にも「顧客」と並んで「取引の相手方」が明記されています。病院や介護施設など、利用者やその家族と接する職場も同様です。

守る対象の「労働者」と「顧客等」「職場」の範囲

指針では、範囲が広めにとられています。

  • 労働者:正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員も含む。派遣社員は、派遣元だけでなく派遣先も措置を講じる必要がある
  • 顧客等:今の顧客だけでなく、今後購入する可能性のある人、取引先の担当者、施設の利用者とその家族、施設の近隣住民なども含む
  • 職場:ふだんの勤務先だけでなく、取引先の事務所、打合せの飲食店、顧客の自宅など、業務を行う場所すべて

罰則・勧告・公表はあるか

措置を講じていないこと自体に、刑事罰は定められていません。ただし、何も起きないわけではありません。

  • 措置を講じていない事業主は、厚生労働大臣による助言、指導、勧告の対象になる(法第42条第1項)
  • 勧告に従わない場合は、その旨を公表されることがある(法第42条第2項)
  • 厚生労働大臣から求められた報告をしない、または事実と異なる報告をすると、20万円以下の過料(法第45条・第51条)
  • 社員は、会社との紛争について都道府県労働局長に解決の援助を求めたり、調停を申し立てたりできる(法第36条・第37条)。会社はそれを理由に不利益な扱いをしてはならない

大臣の権限の一部は、都道府県労働局長に委任できるとされています(法第46条)。

さらに大きいのは民事上のリスクです。会社には、社員が心身ともに安全に働けるよう配慮する義務があります。カスハラを放置して社員がメンタルヘルス不調になれば、損害賠償を求められるおそれもあります。会社が負う責任の範囲は安全配慮義務とメンタル不調で問われる会社の責任で整理しています。

カスハラ対策で企業が講ずべき措置(指針の5つの柱)

指針が「講じなければならない」とする措置は、大きく次の5つです。

  • 方針の明確化と周知・啓発:カスハラには毅然と対応し、社員を守るという方針を決め、管理職を含む社員に伝える。カスハラの内容と、あらかじめ決めた対処の内容も周知する
  • 相談体制の整備:相談窓口をあらかじめ決めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする
  • 事後の迅速かつ適切な対応:事実関係を確認し、被害を受けた社員への配慮と、再発防止の措置をとる
  • 抑止のための措置:特に悪質なケースへの対処方針(警察への通報、警告文、出入り禁止など)を決めて周知し、実行できる体制をつくる
  • あわせて講ずべき措置:相談者のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な扱いをしないと定めて周知する

パワハラ防止の措置とよく似ていますが、4つ目の「抑止のための措置」はカスハラならではの項目です。次の章では、これを小さな会社が進める順番に並べ直します。

まだ整っていない会社のカスハラ対策 7つの手順

完璧な規程を一度に作ろうとするより、まず「方針」「窓口」「現場ルール」の3点を整え、運用しながら直していく方が現実的です。

ステップ1:自社で起きやすいカスハラを洗い出す

どの部署で、どんな場面で、どんな言動が起きているかを確認します。接客や電話対応、営業、支払い交渉など、顧客や取引先と接する社員に短く聞き取るだけでも十分です。

ステップ2:方針を決め、トップが発信する

次に、「カスハラには毅然と対応し、社員を守る」という会社の方針を文章にします。A4で1枚程度、カスハラの定義と、正当な苦情には誠実に対応することも書いておきます。

方針は、社長名のメッセージとして朝礼やメール、社内掲示で伝えます。指針は、同じ方針をお客様の側にも知らせることが被害の防止に効果的だとしています。ホームページへの「カスタマーハラスメントに対する基本方針」の掲載や、店頭・受付への掲示が代表的な方法です。公的機関が無料で配っている掲示物と、自社で作る場合の文例は、カスハラポスターの無料ダウンロード先と掲示文の例文にまとめました。

ステップ3:現場での対処ルールと「悪質ケース」の線引きを決める

社員がその場で迷わないよう、対処の内容をあらかじめ決めて周知します。指針は例として次のような対処を挙げています。

  • すぐに上司へ報告し、その場の対応について指示を受ける
  • できるだけ一人で対応させず、必要なら上司が代わって対応する
  • 個人情報保護法などを守ったうえで、やり取りを録音・録画する
  • 十分に説明しても同じ要求が続く場合は、一定の時間で退店を求める、電話を切る
  • 暴行や脅迫など犯罪にあたり得る言動は、警察へ通報する
  • 法的な手続きが必要な場合は、弁護士に相談する

あわせて、特に悪質なケースへの対処方針(警告文、法令の範囲内でのサービス提供の停止、出入り禁止、仮処分の申立てなど)を決めます。これが「抑止のための措置」にあたります。小さな会社では、誰が最終判断するか(社長、店長など)を明記しておくことが大切です。

ここまでの内容は、「カスハラ対策マニュアル」として1冊にまとめておくと、新しく入った社員にも伝えやすくなります。ゼロから作る必要はなく、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を下敷きに、自社の場面と判断する人の名前を書き込めば足ります。社員の安全を守る工夫として、名札をフルネームから名字だけにする、写真付きの社員紹介を見直すといった対応をとる会社もあります。

ステップ4:カスハラの相談窓口を決めて周知する

相談窓口をあらかじめ決め、担当者名と連絡先を社員に伝えます。パワハラやセクハラの窓口と一本化してかまいません。外部の機関に委託することも、指針で窓口を定めている例として挙がっています。カスハラに特有の窓口づくりのポイントは次の章で紹介します。

ステップ5:発生時の対応フローと記録の様式をつくる

カスハラが起きたときの流れを、1枚の図や箇条書きにしておきます。

  • 相談を受けたら、本人と周囲の社員から事実を聞き、録音などの記録があれば確認する
  • カスハラが確認できたら、担当の交代、複数人での対応、行為者と引き離すなど、被害を受けた社員への配慮を行う
  • 方針の再周知や、原因となった接客・商品の問題の改善など、再発防止の措置をとる
  • 対応の経緯を記録し、個人情報に配慮して関係者で共有する

指針は、カスハラの事実が確認できなかった場合でも、再発防止の措置は同じように講じるよう求めています。「確認できなかったから終わり」にしないことがポイントです。

ステップ6:プライバシー保護と不利益取扱いの禁止を定める

相談した社員の情報は、本人のプライバシーとして守る必要があります。相談対応の留意点をマニュアルに書き、担当者に共有します。

また、相談したことや事実確認に協力したことを理由に、解雇などの不利益な扱いをしないことを、就業規則などに定めて社員に周知します。不利益な扱いの禁止は、改正法の条文(第33条第2項)にも直接書かれています。

就業規則に条文を足す場合の規定例は、次のような形です。【】の部分は自社に合わせて書き換えてください。

  • 第【○】条(顧客等からの著しい迷惑行為への対応)
  • 会社は、顧客、取引先その他の関係者からの言動であって、社会通念上許容される範囲を超え、従業員の就業環境を害するもの(以下「カスタマーハラスメント」という。)から従業員を守るため、必要な措置を講じる。
  • 従業員は、カスタマーハラスメントを受け、または見聞きしたときは、【所属長または相談窓口】に相談することができる。
  • 会社は、前項の相談をしたこと、または事実関係の確認に協力したことを理由として、従業員に解雇その他不利益な取扱いをしない。
  • 対応の手順は、別に定める【カスタマーハラスメント対応マニュアル】による。

就業規則を変更する場合は、従業員の過半数代表の意見を聞き、常時10人以上の事業場は労働基準監督署へ届け出ます。文言を確定する前に、社会保険労務士などの専門家に確認してもらうと安心です。

ステップ7:研修で周知し、運用しながら見直す

方針、対処ルール、相談窓口を、研修や説明会で社員に伝えます。小さな会社なら、30分ほどの説明会と1枚の資料でも始められます。管理職と一般社員で何を話すか、無料で使える厚生労働省の教材はハラスメント研修の内容と無料教材で紹介しています。

運用を始めたら、社員へのアンケートや意見交換で、窓口が使われているか、ルールが現場に合っているかを確かめ、必要に応じて直していきます。指針では、衛生委員会を活用することも考えられるとしています。

7つの手順のうち、方針やルールは社内で決められても、被害を受けた社員の心の受け止めまでを社内だけで担うのは簡単ではありません。窓口の外側に専門家への相談先を用意する方法を、サービス資料でご確認いただけます。

資料ダウンロード

カスハラ被害の相談先づくりに。ココロチェックのサービス資料

カスハラの相談窓口の作り方

カスハラの被害を受けた社員は、萎縮して相談をためらうことが少なくありません。窓口は「置いただけ」で終わらせず、使いやすい形にしておく必要があります。

担当者は「現場の上司」と「別ルート」の2本立てに

指針では、相談の担当者として上司にあたる管理職を定めることも考えられるとしています。ただ、上司にしか相談できない形だと、言いにくいケースが出てきます。

現場の上司を一次窓口にしつつ、人事・総務や社長など、別のルートでも相談できるようにしておくと安心です。担当者には、指針が求めるとおり、カスハラかどうか微妙な段階でも広く相談を受けることを伝えておきます。

社内に担当者を置くのが難しい、あるいは社内には話しにくいという声がある場合は、外部の相談先を組み合わせます。パワハラ・セクハラと共通の窓口にする場合の担当者の選び方や、相談を受けたときの聞き取りの手順は、ハラスメント相談窓口の設置義務と担当者の対応手順で詳しく解説しています。

社員や会社が使える公的な相談先

社内の窓口とは別に、公的な相談先も案内しておくとよいでしょう。

  • 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内):労働者、事業主のどちらも無料で相談できる
  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):ハラスメント対策の措置義務についての相談先

カスハラの被害を受けた社員のメンタルケア

カスハラ対策の目的は、社員の心身を守ることです。手続きを整えるのと同じくらい、被害を受けた社員のケアを考えておく必要があります。

指針が求める「被害者への配慮」

指針は、カスハラが確認できた場合の被害者への配慮の例として、上司が代わって対応すること、行為者と引き離す配置換え、そして管理職や産業保健スタッフなどによる「メンタルヘルス不調への相談対応」を挙げています。

産業医や保健師がいない会社では、この「メンタルヘルス不調への相談対応」を誰が担うかが課題になります。上司は現場で一緒に対応した当事者であることも多く、専門的な受け止めまでは難しいのが実情です。

一人で抱え込ませないための工夫

強い暴言や脅迫は、1回でも心に大きな負担を残すことがあります。

  • 被害を受けた直後は、可能なら顧客対応から一時的に外し、休憩をとらせる
  • 「あなたのせいではない」と会社として明確に伝える
  • 眠れない、出勤がつらい、同じ場面を思い出すなどの変化が続くときは、専門家への相談をすすめる
  • 数週間後にも声をかけ、継続して様子を見る

不調が長引いて仕事を休む必要が出たときに備え、会社側の休職の手続きも確認しておきましょう。

カスハラ対策の注意点と、あわせて確認したいこと

行き過ぎや見落としを防ぐための注意点と、同じ時期に始まった制度を整理します。

正当な申入れや合理的配慮の求めはカスハラではない

障害のある顧客が、不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、障害による困りごとへの配慮(合理的配慮)を求めることは、カスハラにはあたりません。指針でも明記されています。

また、法律でサービス提供が義務づけられている業種や、サービスを止めると顧客の生命や健康に影響が出る場合には、出入り禁止などの対処にも慎重さが求められます。

自社の社員が加害者にならないために

改正法では、事業主や社員にも、他社の社員への言動に注意を払う努力義務が定められました。取引先や下請けに対して、自社の社員や役員が過大な要求をしていないかも見直しましょう。他社からカスハラについて事実確認への協力を求められたら、応じるよう努める必要があります(法第33条第3項)。

介護・医療・飲食などは業種別マニュアルも参考に

指針は、必要な対応は業種や業態によって異なるとしています。厚生労働省のハラスメント対策サイト「あかるい職場応援団」では、全業種向けの企業マニュアルのほか、介護、障害福祉、飲食、スーパーマーケット、宅配業、教育などの業種別マニュアルを無料で公開しています。介護施設や病院では、前の項目の「サービスを止められない場面」の線引きを、業種別の資料で確かめておくと安心です。なお、全業種向けのマニュアルなど一部には「法改正の成立前の内容」という注記があるため、指針とあわせて読みましょう。

就活生などへのセクハラ防止も同時に義務化

同じ2026年10月1日から、男女雇用機会均等法の改正により、就職活動中の学生などの求職者に対するセクハラの防止措置も、事業主の義務になりました(指針は令和8年厚生労働省告示第52号)。面接やOB・OG訪問、インターンシップに関わる社員がいる会社は、カスハラの方針とあわせて見直しておくと効率的です。

改正の全体像は厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」で確認できます。

都内の事業者は東京都の条例と奨励金も確認を

東京都では、全国で初めての「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が2025年4月1日から施行されています。罰則のない理念型の条例で、事業者にはカスハラ防止のための手引(マニュアル)の作成などに努めることが求められています。

東京都は、都内の中小企業等(常時雇用する従業員300人以下)を対象に、カスハラ対策の奨励金(40万円)も設けています。2026年度の第2回募集は、事前エントリーが2026年10月23日から11月6日までです。カスハラ対策マニュアルの作成に加えて、録音・録画環境の整備、AIを活用したシステム等の導入、外部人材の活用のいずれかに取り組むことが条件とされています。細かな要件は東京都の発表で確認してください。

埼玉県や群馬県など、東京都以外にも条例を定めた自治体があります。自社の所在地の都道府県のホームページもあわせて確認しておくと確実です。

ココロチェックで、カスハラ被害の後のこころを支える

カスハラ対策の義務化への対応は、方針と窓口を整えることがゴールではありません。被害を受けた社員が安心して相談し、回復していけるところまで支えることが本来の目的です。

ただ、前の章で見たとおり、産業保健スタッフのいない会社では「メンタルヘルス不調への相談対応」の担い手が社内に見つかりにくいものです。この部分を外の専門家で補うのが一つの方法です。

ココロチェックは、産業保健の担当者がいない会社のための、法人向けメンタルヘルスサービスです。組織の状態を「測る」ところから、社員が専門家に相談して「癒す」ところまでを、一つのサービスで支えます。

  • 社員の相談先になる:公認心理師・臨床心理士などの専門家に、オンラインで1回30分から相談できます。カスハラで気持ちが沈んでいる社員や、社内には話しにくい社員の受け皿になります
  • 人事に個人の情報は渡さない:会社が見られるのは組織単位の傾向だけで、誰が相談したかは本人の同意なく伝わりません
  • 組織の状態を測る:設問に答えるだけで、組織の状態と部署ごとの傾向がわかる組織診断を無料で用意しています。顧客対応の多い部署に負担が偏っていないかを確かめるきっかけになります

お客様と接する部署にどれだけ負担がかかっているかは、外からは見えにくいものです。まずは無料の組織診断で、自社の状態を確かめるところから始めてみませんか。

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設問に答えるだけで、部署ごとの状態がわかります。カスハラ対策の優先順位づけや、被害を受けやすい職場の把握にお使いください。

カスハラ対策の義務化のよくある質問

最後に、カスハラ対策の義務化について、人事・総務のご担当者からよく寄せられる質問にお答えします。

Q. カスハラ対策の義務化はいつからですか?

2026年10月1日からです。2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法と、厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)にもとづき、事業主に雇用管理上の措置が義務づけられました。

Q. カスハラ対策の義務化で、企業は何をすればいいですか?

指針が求める措置は、方針の明確化と周知、相談窓口の整備、起きた後の迅速な対応、特に悪質なケースへの対処方針(抑止のための措置)、プライバシーの保護と不利益な扱いの禁止です。まだ準備ができていない会社は、方針、相談窓口、現場の対処ルールの3つから先に整えましょう。

Q. 従業員が少ない中小企業も、カスハラ対策は義務ですか?

義務です。労働者を1人でも雇っていれば、会社の規模や業種にかかわらず対象になります。従業員50人未満の会社への猶予もありません。

Q. カスハラ対策をしないと罰則はありますか?

措置をとらないこと自体に刑事罰はありません。ただし、行政の助言・指導・勧告の対象になり、勧告に従わなければ会社名などを公表されることがあります。求められた報告をしなかったり、事実と違う報告をしたりすると、20万円以下の過料が科されることがあります。

Q. カスハラの相談窓口は、パワハラの窓口と同じでもよいですか?

かまいません。指針でも、他のハラスメントの相談窓口と一体的に設置することが考えられるとしています。外部の機関に相談対応を委託する方法もあります。

Q. カスハラ対策のために就業規則の変更は必要ですか?

指針は、相談したことを理由に不利益な扱いをしない旨を、就業規則などの服務規律を定めた文書に規定する方法を例に挙げています。方針や対処ルールは別の規程やマニュアルで定めることもできますが、不利益な扱いの禁止を明文化したり、懲戒とつなげたりする場合は、就業規則の見直しを検討しましょう。規定例は、この記事の手順のステップ6で紹介しています。

まとめ:カスハラ対策の義務化は「方針・窓口・現場ルール」から

カスハラ対策の義務化について、要点を振り返ります。

  • 2026年10月1日から、労働者を雇うすべての事業主に、カスハラ対策の雇用管理上の措置が義務づけられた。50人未満の会社も対象
  • 指針が求めるのは、方針の明確化、相談体制、事後対応、抑止のための措置、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止の5つ
  • まだ整っていない会社は、方針、相談窓口、現場の対処ルールを先に整え、被害を受けた社員の相談先まで用意しておく

カスハラ対策は、社員が安心して顧客と向き合える職場をつくるための土台です。義務化を機に、社員を守る仕組みと、傷ついたときに頼れる相談先をあわせて整えていきましょう。カスハラ対策を入り口に、職場のメンタルヘルス対策の全体像にも目を向けておくと、次の一手が決めやすくなります。

方針や窓口が整ったら、次は社員がいまどんな状態にあるかを知る番です。

カスハラ対策の次は、社員の状態を知る

無料の組織診断で、部署ごとのストレスの傾向を確かめられます。会社に届くのは組織単位の傾向だけです。

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この記事を書いた人

はたらくこころ研究所 編集部のアバター はたらくこころ研究所 編集部 運営:株式会社remental

はたらくこころ研究所は、株式会社remental が運営する、職場のメンタルヘルスの情報メディアです。編集部では、産業医や保健師などの産業保健の担当者がいない会社で人事・総務・経営を担う方に向けて、ストレスチェック、休職・復職、ハラスメント対策、管理職のラインケアなどの実務をまとめています。
法令や制度に関する記事は、厚生労働省など公的機関が公表している情報をもとに作成し、制度の改正にあわせて見直しています。

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