退職引き止めはどこまでOK?違法な例と会社側の面談の進め方

退職引き止めはどこまでOK?違法な例と会社側の面談の進め方

「部下から突然、辞めたいと言われた。引き止めたいが、何をどこまで言っていいのか分からない」。人手に余裕のない会社では、ひとりの退職が現場に大きく響くだけに、上司も経営者もあわてがちです。

この記事は、退職を申し出た社員に、会社や上司がどう対応するかをまとめたものです。結論から言うと、退職引き止めは、本人の話を聴き、残ってもらうための条件を示して「お願い」する範囲なら問題ありません。一方で、退職届を受け取らない、損害賠償をちらつかせる、有給休暇を使わせないといった引き止めは、法律に反したり、ハラスメントになったりするおそれがあります。退職を決めるのは本人で、会社の承諾は要りません。

民法や労働基準法、労働局の案内をもとに、引き止めてよい範囲とやってはいけない引き止め、面談の進め方と話し方の例、そして引き止めより先に会社がやっておきたい離職防止を、従業員30〜100人の会社の目線で整理しました。

この記事でわかること

  • 退職引き止めの意味と、退職は会社の承諾なしに成立するという法律の前提
  • 違法やハラスメントになりうる、やってはいけない引き止め
  • 部下の退職を切り出されたときの面談の手順と、本音を聴く話し方の例
  • 引き止めて残った社員へのフォローと、上司自身の受け止め方
  • 引き止めに頼らないための、会社の離職防止
目次

退職引き止めとは?会社が先に知っておく「退職の自由」

まず、退職引き止めの意味と、会社が引き止めを考える前に押さえておくべき法律の前提を確認します。ここを知らずに面談に臨むと、善意の引き止めがトラブルの種になります。

退職引き止め(慰留)の意味と、会社が引き止める理由

退職引き止めとは、退職の意思を伝えてきた社員に、会社や上司が考え直して残ってもらうよう働きかけることです。人事の言葉では「慰留(いりゅう)」と言い換えることもあります。

会社が引き止める理由は、後任がすぐに見つからない、仕事を任せられる人を失いたくない、残るメンバーの負担が増える、採用や育成にかけた費用が無駄になる、といったものです。小さな会社ほど穴を埋めにくいのが本音でしょう。ただ、本人にとっては長く迷った末の結論であることがほとんどです。

退職は会社の承諾がなくても成立する

正社員など期間の定めのない雇用では、民法第627条第1項により、労働者はいつでも退職(解約)を申し入れることができ、申し入れの日から2週間がたつと雇用は終わります。会社が「認めない」と言っても、退職の効力は生じます。

就業規則で「退職の申し出は1か月前まで」などと決めている会社も多いでしょう。引き継ぎのための目安として本人に協力をお願いするのはかまいませんが、法律上は民法の定めが優先されると考えておくのが安全です。茨城労働局の事業主向けQ&A「退職の申出があった際には」も、民法の規定を強行規定とみて、退職届の提出から2週間で会社の承諾がなくても退職の効力が生じるとした裁判例を紹介し、「新しい人が見つかるまで、いつまでも退職を許可しないということはできません」としています。

なお、月給制などで申し入れの時期を区切る民法第627条第2項・第3項は、現在の条文では会社側からの解約の申し入れに限られます。月給制だからといって、本人の退職を先延ばしできるわけではありません。

契約社員など有期雇用の社員の場合

契約社員やパートなど、雇用の期間を決めている社員は扱いが異なります。契約期間の途中で辞めるには、原則として「やむを得ない事由」が必要です(民法第628条)。ただし、1年を超える期間の契約では、契約の初日から1年がたった後は、本人が申し出ればいつでも退職できます(労働基準法第137条。一定の事業の完了までの契約や、高度な専門知識を持つ人などの例外あり)。

有期雇用でも、病気や介護など続けられない事情はあります。「契約期間中だから辞められない」と突っぱねず、事情を聴いて話し合いましょう。

退職引き止めは違法?やってはいけない引き止め

退職引き止めそのものは違法ではありません。問題になるのは、本人の意思を押さえつけて辞めさせない「強引な引き止め」です。避けるべき行為を確認します。

退職届を受け取らない、「退職は認めない」と言う

退職届を受け取らない、机に置かれたまま放っておく、「後任が決まるまで辞めさせない」と言う。どれも退職の効力を止めることはできず、受け取りを拒んでも、本人が郵便などで意思を伝えれば同じです。「話を聞いてもらえない会社」という印象だけが残ります。

退職届は受け取り、受け取った日付を記録しておきましょう。そのうえで、考え直してもらえないか話をするのは自由です。

損害賠償や違約金をちらつかせる

「今辞めたら、損害賠償を請求する」「研修費を全額返してもらう」と迫るのは避けてください。労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償の額をあらかじめ決めたりする契約を禁止しています。「途中で辞めたら罰金」といった誓約書を書かせることも、この条文に反するおそれがあります。

実際に損害が生じたとして会社が賠償を求める場合も、認められる範囲は限られます。厚生労働省の「確かめよう労働条件」に載っている裁判例(ケイズインターナショナル事件、東京地裁平成4年9月30日判決)では、入社直後に辞めた社員への請求が、会社側の採用手続や労務管理の不備も考慮されて、請求額の約3分の1に減らされています。

有給休暇の消化を認めない

「辞める人に有給は使わせない」も認められません。年次有給休暇は、退職が決まった社員でも在籍中は取る権利があります。会社は事業の正常な運営を妨げる場合に取得の時季を変えられますが(労働基準法第39条第5項)、退職日より後に時季を変えることはできません。沖縄労働局の事業主向けの年休の相談事例でも、退職前の年休の請求は請求どおり与えなければならないとしています。

引き継ぎが間に合わないときは、退職日を少し後ろにできないか本人に相談します。

何度も呼び出す、人格を否定する、罪悪感をあおる

「お前みたいなやつはどこへ行っても通用しない」「みんなに迷惑がかかるのが分からないのか」と責める、毎日のように面談に呼び出す、長時間部屋から出さない。こうした引き止めは、パワーハラスメントになるおそれがあります。人格を否定する言動や、必要以上に長い叱責を繰り返すことは、厚生労働省のパワハラの指針で「精神的な攻撃」の例に挙げられています。脅しや閉じ込めで働き続けさせるような行為は、内容によっては労働基準法第5条(強制労働の禁止)に触れることもあります。

仕事を急に取り上げる、退職を言いふらすなど、居づらくさせる対応も避けます。同僚に説得役を頼むのも、本人には圧力に感じられます。対応に迷うときは、労働局の総合労働相談コーナーや社会保険労務士、弁護士に早めに相談しましょう。

給与や書類の手続きを盾にする

「最後の給料は引き継ぎが終わるまで払わない」「離職票は出さない」と言うのも問題です。労働基準法では、退職した人から請求があれば7日以内に賃金を支払い、本人の金品を返すこと(第23条)、退職の証明書を求められたら遅れずに渡すこと(第22条)が定められています。雇用保険の離職票の手続きも、会社が止めてよいものではありません。

退職引き止めをしてよい範囲と、引き止めない判断

では、会社や上司はどこまでなら引き止めてよいのでしょうか。線引きの目安と、あえて引き止めないほうがよい場面を整理します。

引き止めてよいのは「話し合い」と「条件の提示」まで

引き止めてよい範囲は、本人の話を聴き、会社として変えられることを示し、「残ってくれないか」とお願いするところまでです。具体的には次のようなものです。

  • 退職を考えた理由を聴き、誤解や行き違いがあれば説明する
  • 仕事の量や担当、勤務時間、働く場所の見直しを提案する
  • 部署異動や役割の変更を提案する
  • 給与や評価の見直しを、会社として検討して伝える
  • 「あなたに残ってほしい」という気持ちを率直に伝える

決めるのは本人です。提案を断られたら、それ以上は押さないのが原則です。

給料アップや部署異動で引き止めるときの注意

給料アップや部署異動は、退職理由がそこにあるなら有効です。次の点に気をつけましょう。

  • 口約束にしない。金額や時期、異動先を決めてから伝え、合意したら書面に残す
  • その場しのぎにしない。実行できない約束は、時間をおいてもっと大きな不信になる
  • ほかの社員との公平を考える。「辞めると言えば給料が上がる」という空気が広がると、別の不満を生む
  • 理由とずれた条件を出さない。人間関係が理由の人に昇給だけを示しても、気持ちは変わりにくい

条件を示すのは、本人の話を十分に聴き、経営者や人事と相談したあとにします。上司がその場で「給料を上げるから」と言ってしまうのは避けましょう。

引き止めないほうがよいケース

次のような場合は、引き止めよりも本人の意思と健康を優先します。

  • 心身の不調が理由で、続けることがつらいと話している
  • 家族の介護や転居、進学など、会社では変えられない事情がある
  • 転職先が決まっており、意思がはっきり固まっている
  • 職場でのハラスメントが退職の理由になっている

不調が理由に見えるときは、退職を急いで決める前に、休職という選択肢があることを伝えるのも一つの方法です。会社の休職制度の進め方は会社側から見た休職の手続きの流れでまとめています。ただし、休職を引き止めの手段にしてはいけません。ハラスメントが理由なら、引き止めとは別に事実の確認と再発防止が必要です。

部下の退職を切り出されたときの面談の進め方

部下から退職を切り出されたときに上司がすることを、5つのステップで見ていきます。話し方の例は自社の言葉に合わせて使ってください。

ステップ1:その場では結論を出さず、最後まで聴く

驚いても、まずは最後まで話を聴くことに徹します。その場で引き止めの言葉を並べたり、不満を口にしたりすると、本人はそれ以上話さなくなります。

  • 「話してくれてありがとう。大事な話だから、きちんと聞かせてほしい」
  • 「いつごろから考えていたの?」
  • 「今日は聞くだけにして、私も一度考えさせてもらってもいいかな」

退職の希望時期と、体調に問題がないかだけは、この時点で確かめておきます。

ステップ2:その日のうちに、上の上司や人事に報告する

部下の退職は上司ひとりで抱えず、その日のうちに経営者や人事、自分の上司に報告します。遅れると条件の検討や引き継ぎが後手に回ります。口頭で伝え、メールなどで要点を残しましょう。報告の例です。

  • 件名:〇〇さんの退職の申し出について(ご報告)
  • 本文:本日、〇〇さんから退職の申し出がありました。希望の退職日は〇月〇日です。理由は「〇〇」と聞いていますが、詳しくは次回の面談で確認します。体調面の問題は本人からは出ていません。今後の対応(面談の日程、条件の検討、引き継ぎ)についてご相談させてください。

家庭の事情や体調の話は、本人の了解を得てから必要な人にだけ伝えます。

ステップ3:退職引き止めの面談で「本音」を聴く

2回目の面談では、退職を考えた本当の理由を聴きます。退職の申し出のときに話す理由は、角の立たない言い方であることが多く、本音は別にあることも珍しくありません。厚生労働省の「令和7年雇用動向調査」でも、転職した人が前の職場を辞めた理由として、労働時間や休日などの労働条件、職場の人間関係、収入の少なさが上位に挙がっています。

本音を聴くための問いかけの例です。

  • 「今の仕事で、一番しんどかったのはどんなとき?」
  • 「もし一つだけ変えられるとしたら、何が変わっていれば続けられたと思う?」
  • 「私の関わり方で、やりにくかったところがあれば教えてほしい」
  • 「会社に言いにくいことがあれば、人事にだけ伝えることもできるよ」

場所は周りに声が届かない個室かオンラインにし、話をさえぎらず、反論しないことが大前提です。上司との関係が理由になっていそうなときは、人事や経営者が別に話を聴く場を用意しましょう。

ステップ4:提示できることを決めて、もう一度伝える

聴いた理由のうち、会社として変えられることがあるなら、経営者や人事と相談して、提示できる条件を決めます。決まったら、もう一度面談の場を設けて伝えます。

  • 「〇〇の負担が大きかったと聞いて、担当を見直せないか相談した。〇月から△△さんと分担する形にできる」
  • 「あなたに残ってほしいと思っている。そのうえで、決めるのはあなただから、考えてみてもらえるとうれしい」
  • 「返事は急がなくていい。〇日ごろまでに気持ちを聞かせてもらえるかな」

引き止めの面談は、この1回で区切ります。答えを急がせたり、何度も同じ話をしたりはしません。

ステップ5:残るか辞めるかが決まったら、気持ちよく送る

本人が退職を選んだら、その時点で引き止めはやめ、引き継ぎと送り出しに切り替えます。最後まで丁寧に接することは、辞めた人の評判や、いずれ戻ってくる「出戻り」の可能性につながります。

  • 引き継ぎの範囲と期限を本人と一緒に決め、有給休暇の取り方も確認する
  • チームへの伝え方と時期、最終日の挨拶や餞別の有無は、本人の希望を聞いて決める
  • 最終日には、これまでの働きへのお礼を言葉にして伝える

送り出しのメッセージは「〇〇の仕事では本当に助けられました。新しい場所でも応援しています」のように、具体的な仕事への感謝を入れると伝わります。

ここまで見てきたように、退職の本当の理由は、申し出を受けてからでは聴き出しにくいものです。上司には言いにくい不満や疲れを、辞めると決める前に話せる先が社内にない会社も少なくありません。社外の相談先をあわせて検討する際の材料として、サービス資料をご用意しています。

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引き止めて残った社員へのフォロー

本人が残ることになっても、そこで終わりではありません。残った社員が後悔しないよう、会社が約束を守ることが大切です。

約束したことを期限つきで実行する

担当の見直しや異動、給与の改定など、引き止めの面談で約束したことは、いつまでに何をするかを決めて実行します。1〜3か月後に上司が面談を設け、約束したことが実際に変わったか、働きやすくなったかを確かめましょう。定期的な1対1の面談で話すテーマに迷うときは、1on1で話すことと上司が使える質問の例が参考になります。

本人が退職を考えていたことは周りに広めないようにします。「一度辞めると言った人」扱いは居づらさを生みます。

「やっぱり辞めたい」と言われたら

一度残った社員から「やっぱり辞めたい」と言われることもあります。約束を実行できていなかったなら、まずそれを率直に認めます。実行したうえでの再度の申し出なら、本人の意思はもう固いと受け止め、今度は引き止めずに送り出しましょう。二度目の強い引き止めは、よい結果を生みにくいものです。

部下の退職は上司の責任?評価と受け止め方

部下の退職は上司にとってもショックな出来事です。上司の責任や評価の考え方を整理します。

部下の退職で上司の評価を下げるべきか

部下の退職の理由には、家族の事情や将来の計画など、上司が変えられないものも多く含まれます。辞めた人数だけで上司の評価を下げると、上司は退職の申し出を報告しにくくなり、無理な引き止めに走りやすくなります。

見るべきなのは、部下の変化に気づいていたか、申し出をすぐ報告したか、理由を職場の改善につなげたか、という対応の中身です。

上司がショックを一人で抱えない

部下に辞められると、「自分のせいではないか」と落ち込む上司は少なくありません。人事や経営者は上司を責めず、一緒に理由を振り返る場を設けましょう。管理職自身も、社外の相談先を使ってよいことを伝えておくと安心です。

退職引き止めより先に、会社がやるべき離職防止

申し出の時点で、本人の気持ちはほぼ固まっています。引き止めの技術を磨くより、申し出の前に手を打つほうがずっと効果的です。

退職の前兆に、申し出の前に気づく

退職を考えている人には、会話が減る、休み方が変わる、身の回りを整理し始めるといった変化が出ることがあります。悩みの段階で気づければ、話を聴き、変えられることを一緒に考える余地が残ります。どんな変化に目を向ければよいかは、仕事を辞める人の前兆チェックリストにまとめています。

退職の理由を集めて、職場の問題を直す

辞めた人が話した理由は、残っている社員も感じているかもしれない不満の手がかりです。退職の面談で聴いた理由を記録し、労働時間、仕事の偏り、人間関係、評価の仕組みなど、会社として直せるものから手を付けましょう。社員が次々に辞める会社に共通する原因と立て直し方は、会社から人が辞めていく原因と対策で解説しています。

ひとりの退職を、連鎖させない

小さな会社では、ひとりが辞めると残ったメンバーの仕事が増え、それが次の退職のきっかけになることがあります。退職者が出たら、仕事の割り振りをすぐに見直し、残るメンバーに今後の体制を説明しましょう。退職が続くときの手の打ち方は、連鎖退職の防ぎ方で詳しく扱います。

離職のコストを数字でつかむ

ひとりが辞めると、採用の費用、教育にかけた時間、引き継ぎの間の生産性の低下など、見えにくいコストがかかります。離職防止にどこまで予算をかけるかも、金額で見えると判断しやすくなります。従業員数・平均年収・離職率を入れるだけで、離職や休職で1年間に失っているコストの目安がわかる離職コスト計算ツールを用意していますので、使ってみてください。

メンタル不調による退職を防ぐ

退職の理由には、心身の不調もあります。厚生労働省の「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)」(2026年8月公表)では、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した人か、退職した人がいた事業所は13.5%でした。不調のサインに上司が気づき、専門家や休職につなげる仕組みがあれば、辞めずに済んだ人もいるかもしれません。上司が部下の変化に気づいて動くための考え方は、ラインケアと管理職の役割で整理しています。

ココロチェックで、退職の申し出より前に本音を拾う

退職引き止めでできるのは、話を聴き、変えられることを示すところまでです。本当に大切なのは、申し出の前に不満や疲れに気づくことです。ただ、上司には言いにくい本音を拾う場や、どの部署に負担が集まっているかを知る手段を、社内だけで用意するのは簡単ではありません。

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退職引き止めのよくある質問

退職引き止めと部下の退職への対応について、経営者や人事・総務、管理職の方からよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 退職の引き止めは違法ですか?

話を聴き、条件を示して「残ってほしい」とお願いすること自体は違法ではありません。退職届を受け取らない、損害賠償をちらつかせる、有給休暇の取得を拒む、人格を否定するような言葉で責めるといった強引な引き止めは、法律に反したりハラスメントになったりするおそれがあります。

Q. 退職届を受け取らなければ、辞めさせずに済みますか?

済みません。期間の定めのない雇用なら、本人が退職を申し入れてから2週間で雇用は終わります(民法第627条第1項)。退職に会社の承諾は要らないため、退職届を受け取らなくても退職の効力は生じます。

Q. 就業規則に「退職は1か月前までに申し出る」とあれば、それまで引き止めてよいですか?

引き継ぎのために、就業規則の期間を目安に協力をお願いするのはかまいません。ただし、民法の規定を優先し、申し入れから2週間で退職の効力が生じるとした裁判例があり、労働局も、後任が見つかるまで退職を認めないといった扱いはできないとしています。就業規則を理由に退職そのものを拒むことはできないと考えておきましょう。

Q. 退職の引き止めで給料アップや部署異動を提案してもいいですか?

退職の理由に合っていれば、有効な提案になります。経営者や人事と相談して内容を決め、金額や時期をはっきりさせてから伝え、合意したら書面に残しましょう。その場の口約束や、実行できない約束は避けてください。

Q. 部下の退職を上司にどう報告すればいいですか?

申し出を受けた日のうちに、口頭で伝えたうえでメールなどで要点を残します。希望の退職日、本人が話した理由、仕事への影響、今後の面談の予定を書きます。体調や家庭の事情は、本人の了解を得てから必要な人にだけ伝えます。

まとめ:退職引き止めは「お願い」まで、本当の対策は申し出の前に

退職引き止めについて、要点を振り返ります。

  • 退職は会社の承諾なしに成立する。期間の定めのない雇用なら、申し入れから2週間で雇用は終わる(民法第627条第1項)
  • 退職引き止めは、話を聴き、条件を示してお願いするところまで。退職届の不受理、損害賠償の脅し、有給休暇の拒否、人格を否定する言動はしない
  • 部下の退職を切り出されたら、その場で結論を出さずに聴き、当日中に報告し、本音を聴いてから提示できることを決める。決まったら気持ちよく送り出す

退職の申し出を受けてからできることは限られています。前兆に気づき、本音を言える場をつくり、退職の理由から職場を直していくことが、引き止めに頼らない会社への近道です。

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この記事を書いた人

はたらくこころ研究所 編集部のアバター はたらくこころ研究所 編集部 運営:株式会社remental

はたらくこころ研究所は、株式会社remental が運営する、職場のメンタルヘルスの情報メディアです。編集部では、産業医や保健師などの産業保健の担当者がいない会社で人事・総務・経営を担う方に向けて、ストレスチェック、休職・復職、ハラスメント対策、管理職のラインケアなどの実務をまとめています。
法令や制度に関する記事は、厚生労働省など公的機関が公表している情報をもとに作成し、制度の改正にあわせて見直しています。

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