「カスハラ対策の義務化に合わせて、ハラスメント研修をやり直したい」「でも、何をどこまで教えればいいのか、管理職と一般社員で内容を分けるべきなのか分からない」。人事・総務を一人で担うご担当者から、こうした声をよく聞きます。
ハラスメント研修は、法律で「必ず年○回」と決められたものではありません。ただし、厚生労働省の指針では、会社が講じなければならない措置の中で、研修が周知・啓発の代表的な方法として挙げられています。2026年10月1日からはカスタマーハラスメント(カスハラ)対策も全事業主の義務になり、改正後のパワハラ防止指針には、いわゆる「自爆営業」もパワハラに当たり得ると書き込まれました。研修の中身を見直すよい機会です。研修以外も含めた対策の全体像は、ハラスメント対策で企業がやることで確認できます。
この記事では、法律と指針をもとに、管理職・一般社員それぞれに何を教えるか、年に何回行うか、無料で使える教材はどこにあるかを、実務の順に整理しました。
この記事でわかること
- ハラスメント研修は義務なのか、法律と指針での位置づけ
- 管理職向け・一般社員向けのハラスメント研修の内容
- カスハラ研修で扱うべきことと、進め方
- 小さな会社が無料で使える厚生労働省の研修資料と動画
- 研修を「やっただけ」で終わらせない工夫
ハラスメント研修は義務?法律と指針での位置づけ
まず、ハラスメント研修が法律上どう扱われているかを確認しましょう。「研修そのもの」と「会社が講じるべき措置」を分けて考えると、何が求められているのかが見えやすくなります。
研修の実施は「努力義務」として法律に書かれている
労働施策総合推進法は、パワーハラスメント(パワハラ)について、事業主が労働者の関心と理解を深め、ほかの労働者への言動に注意を払うよう「研修の実施その他の必要な配慮」をするよう努めなければならない、と定めています(第32条第2項)。男女雇用機会均等法のセクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントの規定にも、同じ趣旨の努力義務があります。
つまり、研修という形式そのものは「努めなければならない」という努力義務です。研修をしなかったこと自体に罰則があるわけではありません。
同じ条文の第3項では、事業主(法人の場合は役員)自身も、ハラスメントへの関心と理解を深め、言動に注意を払うよう努めることが求められています。研修の対象に経営者や役員を含めるのは、この規定とも合っています。
措置義務の「周知・啓発」で、研修は代表的な方法
一方で、ハラスメント防止の措置そのものは義務です。厚生労働省のパワハラ防止指針は、会社が講じなければならない措置として、方針の明確化と周知・啓発、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、プライバシー保護などを挙げています。
このうち「方針を明確にし、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること」の具体例として、指針は次のような方法を示しています。
- 就業規則などに方針を定め、ハラスメントの内容や原因・背景とあわせて周知する
- 社内報やパンフレット、社内ホームページなどに方針を載せて配布する
- 方針やハラスメントの内容を周知・啓発するための研修、講習などを行う
研修は唯一の方法ではありませんが、方針が伝わったことを示しやすい方法です。また、指針は相談窓口の担当者に対して相談対応の研修を行うことや、ハラスメントが起きた後の再発防止として研修を改めて行うことも、措置の例に挙げています。
2026年10月からカスハラ・就活セクハラの研修も視野に
2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法と改正男女雇用機会均等法により、カスハラ対策と、就職活動中の学生など求職者へのセクシュアルハラスメント対策も、全事業主の措置義務になりました。
パワハラ・セクハラの研修だけを続けてきた会社は、カスハラと就活セクハラの内容を加えておくと、今回の義務化への備えになります。
あわせて、2026年10月1日に適用された改正後のパワハラ防止指針には、商品の買い取り強要等(会社が社員に、本人の自由な意思に反して自社の商品・サービスを買わせる行為。いわゆる「自爆営業」)に関連する言動も、パワハラの3つの要素をすべて満たせばパワハラに該当する、と書き加えられました。販売ノルマのある職場では、研修の事例に入れておきましょう。
カスハラ対策で会社が講じる措置の全体は、カスハラ対策の義務化で企業がやることで7つの手順に整理しています。
研修をしていないと、何が起きるか
措置義務を果たしていない会社は、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象になり、勧告に従わなければその旨を公表されることがあります(第42条)。この権限の一部は都道府県労働局長に委任できるとされています。
それ以上に重いのは民事上のリスクです。社員がハラスメントで不調になった場合、会社が防止のために何をしていたかが問われます。研修の実施記録は、予防に取り組んでいたことを示す材料にもなります。
ハラスメント研修の内容は対象別に組む
ハラスメント研修の内容は、全員に同じ話をするより、立場に合わせて組み立てる方が伝わります。ここでは、全員に共通する土台と、管理職・一般社員・相談窓口担当者それぞれに足す内容を紹介します。
全社員に共通するハラスメント研修の内容
立場にかかわらず、次の点は全員に伝えます。
- 会社の方針(ハラスメントを許さない、相談した人を守る、行為者には厳正に対処する)
- パワハラ・セクハラ・マタハラ・カスハラなど、主なハラスメントの定義
- パワハラの3つの要素(優越的な関係を背景とした言動、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、就業環境が害されること)
- パワハラの6つの類型(身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)
- 社内の相談窓口の場所と使い方、相談しても不利益な扱いを受けないこと
- 就業規則での懲戒の扱い
管理職向けハラスメント研修の内容
管理職は、行為者になり得る立場であると同時に、部下から最初に相談を受ける立場でもあります。管理職向けには、次の内容を厚めにします。
- 指導とパワハラの線引き:業務上必要かつ相当な範囲の指導はパワハラに当たらないこと。人格を否定しない、人前で長時間叱責しない、などの具体的な目安
- 部下から相談を受けたときの初動:話を最後まで聞く、その場で結論を出さない、本人の同意を得て窓口や人事につなぐ
- カスハラが起きたときの対応:現場から報告を受けたら、担当者を一人で対応させず、上司が引き継ぐ、記録を残す
- 自分の言動の振り返り:無意識の決めつけや、冗談のつもりの発言が相手にどう受け取られるか
- 部下の不調のサイン:遅刻や欠勤の増加、表情や口数の変化など、いつもと違う様子に気づいたときの声のかけ方
指針は望ましい取組として、感情のコントロールやマネジメント・指導についての研修も挙げています。「やってはいけないこと」だけでなく「代わりにどう伝えるか」まで扱いましょう。たとえば、次のような言い換えの例を研修資料に入れておくと、管理職がすぐに使えます。
- 「何度言ったら分かるんだ」→「この手順のどこが分かりにくかったか教えてください」
- 「やる気がないなら帰れ」→「今日の作業で困っていることはありますか」
- 「こんなこともできないのか」→「次は○○を確認してから進めてください」
- 「お前は本当に使えない」→「この資料は、数字の根拠を足して明日までに直してください」
- 「(みんなの前で)ちょっと来い」→「5分ほど、会議室で話せますか」
一般社員向けハラスメント研修の内容
一般社員向けには、自分が加害者にも被害者にもならないための内容を中心にします。パワハラ防止指針も、言動に注意を払う相手に他社の社員や求職者を含めているため、社外の人への接し方も扱いましょう。
- 同僚や後輩、取引先の社員への言動で気をつけること(容姿や私生活への言及、性的な冗談、からかいなど)
- ハラスメントを受けたとき、見かけたときの相談のしかた
- 適正な業務指示や指導はハラスメントではないこと
- 自分が取引先や他社の社員に対してカスハラをしないこと
- 就職活動中の学生などと接する機会があるときの注意点
法律は、自社の社員が他社の社員にカスハラをしないよう研修などに努めることも求めています(第34条第2項)。発注者の立場になる社員がいる会社は、この視点も入れましょう。
相談窓口担当者向けの研修
相談窓口の担当者には、指針が例として挙げる「相談を受けた場合の対応についての研修」と「プライバシー保護のための研修」が必要です。聞き取りの手順、記録の取り方、人事部門との連携、相談者の情報を誰にどこまで伝えてよいか、を確認します。
担当者の決め方や、相談を受けたときの聞き取りの流れは、ハラスメント相談窓口の担当者の対応手順とあわせて準備すると、研修の中身を組み立てやすくなります。
カスハラ研修で扱う内容
カスハラ研修は、パワハラ研修とは目的が少し違います。社内の言動を正すのではなく、顧客や取引先からの行き過ぎた言動から社員を守り、現場で迷わず動けるようにすることが中心です。
方針と対処ルールをセットで伝える
カスハラ指針は、方針を「あらかじめ定めた対処の内容と併せて」研修などで周知する方法を示しています。「会社は社員を守る」と言うだけでは、現場は動けません。
カスハラ研修では、少なくとも次の点を伝えます。
- カスハラの定義と、正当なクレームとの違い
- 対応を打ち切ってよい目安(時間、回数、言動の内容)
- 上司や責任者に引き継ぐタイミングと連絡方法
- 録音や記録の残し方
- 暴力や脅迫など特に悪質な場合の対処(警察への通報など)
- 被害を受けた後の相談先
現場の初期対応はロールプレイで練習する
長時間の電話や大声での威圧などへの初期対応は、説明を聞くだけでは身につきにくいものです。自社で起きた場面をもとに、短いロールプレイで「最初に何と言うか」「どこで上司を呼ぶか」を練習しておきましょう。3〜4人のグループで、お客様役、対応役、観察役を交代しながら行い、最後に観察役が気づいたことを共有する形にすると、少人数でも進められます。
研修で伝えたルールは、休憩室や店頭の掲示でも思い出せるようにしておくと定着します。使える掲示物と文例は、カスハラポスターの無料ダウンロード先と掲示文の例文で紹介しています。
顧客対応力を高める研修も望ましい取組
カスハラ指針は、望ましい取組として、接客や商品・サービス、苦情対応についての研修で社員の対応力を高めることも挙げています。正当な申入れには誠実に応え、行き過ぎた言動には組織で対応する。この2つを両方伝えると、「お客様の声を軽く扱う研修」だという誤解も防げます。
ハラスメント研修の進め方(小さな会社向け5ステップ)
従業員30〜100人ほどの会社では、外部の講師を毎年呼ぶのは負担が大きいこともあります。ここでは、人事・総務の担当者が自分で組み立てる場合の流れを紹介します。
ステップ1:自社の課題をつかむ
研修の前に、無記名のアンケートや過去の相談内容から、社員がどんな場面で困っているかを確認し、重点を決めます。
ステップ2:対象と時間を決める
一例として、次のような組み方があります。
- 管理職:60〜90分。指導の線引きと相談の初動、カスハラ発生時の対応を中心に
- 一般社員:45〜60分。定義と相談先、カスハラへの対処ルールを中心に
- 相談窓口担当者:別途、聞き取りとプライバシー保護の確認
- 経営者・役員:トップメッセージの発信とあわせて、管理職研修に同席する
ステップ3:教材を準備し、講師を決める
ゼロから作る必要はありません。後で紹介する厚生労働省の研修資料をもとに、自社の方針、相談窓口、就業規則の該当条文、自社で起こりやすい事例を差し込めば、十分な教材になります。
講師は、人事担当者や経営者が務めても問題ありません。管理職向けだけは外部の講師に依頼する、法改正のあった年だけ社会保険労務士や弁護士に依頼する、といった組み合わせも現実的です。外部に頼む場合も、自社の就業規則と相談窓口の説明は社内の担当者が行うと、受講者が自分ごととして受け止めやすくなります。
ステップ4:実施して記録を残す
実施日、対象者、参加者、使った資料を記録し、資料と一緒に保管しておきます。欠席者には動画や資料で後日フォローし、全員に伝わったことを確認します。パートやアルバイトも措置の対象の労働者に含まれるため、勤務時間に合わせて受けられる形にしておきましょう。派遣社員については、派遣先の会社も自社の社員と同じように措置を講じる必要があると指針に書かれているため、受け入れている派遣社員も研修の対象に含めます。
ステップ5:振り返って次の計画に反映する
受講後のアンケートで、分かりにくかった点や現場で困っている場面を集め、翌年の研修やマニュアルの見直しに生かします。満足度だけでなく、次のような設問で感想を集めると、次回の重点が見えます。
- 今日の研修で、自分の職場でも起こり得ると感じた場面はどれですか
- 研修の後も判断に迷いそうな場面があれば、書いてください
- 社内の相談窓口の場所と連絡方法を知っていますか
- 社内の窓口に相談しにくいと感じる理由があれば、教えてください
最後の設問で「社内には話しにくい」という声が多く出ることは珍しくありません。研修で声を上げる意識が高まった後に、社外の相談先をどう用意するかは、サービス資料で具体的にご確認いただけます。
資料ダウンロード
研修後の相談先づくりに。ココロチェックのサービス資料
無料で使える公的なハラスメント研修教材
予算が限られる小さな会社でも、厚生労働省の無料の教材を使えば、研修の土台はつくれます。いずれも2026年10月5日時点で公開を確認したものです。
あかるい職場応援団の研修資料
厚生労働省のハラスメント対策ポータルサイト「あかるい職場応援団」では、パワハラ対策導入マニュアル(第4版)の参考資料として、次の研修用資料をPowerPoint形式で公開しています。
- 管理職向け研修資料
- 労働者向け研修資料
- 管理職向け自習用テキスト
- 労働者向け自習用テキスト
あわせて、トップメッセージの例文、アンケートの実施マニュアル、相談受付票などの様式もダウンロードできます。利用時は出典を明記し、営利目的では使わないよう案内されています。資料はあかるい職場応援団のダウンロードコーナーから入手できます。
研修動画とオンライン研修講座
同じサイトでは、研修動画や、労働者向け・人事労務担当者向けのオンライン研修講座も公開されています。研修の導入に動画を流し、その後に自社のルールを説明する使い方ができます。
厚生労働省の委託による無料のハラスメント対策研修(事業主向け、相談窓口担当者向けなど)も、オンラインで開催・配信されています。最新の案内はあかるい職場応援団のハラスメント対策研修のページで確認できます。
カスハラ研修に使える資料
カスハラについては、次の資料が使えます。
- 改正法の施行に合わせたカスハラ対策の説明動画と研修資料(PDF)
- カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
- カスハラ対策のリーフレットとポスター
- 業種別の対策マニュアル(スーパーマーケット、宅配業、介護、障害福祉など。関係省庁が作成したものを含む)
求職者等へのセクシュアルハラスメントについても、改正法の説明動画と研修資料が公開されています。なお、東京都は都内の中小企業等を対象に、カスハラ対策マニュアルの作成などに取り組んだ場合の奨励金(40万円)を設けています。2026年度第2回の事前エントリーは10月23日から11月6日までで、要件は東京都の発表で確認してください。法改正の全体像は厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」にまとまっています。
管理職のメンタルヘルス教育は産業保健総合支援センターも
各都道府県の産業保健総合支援センターでは、個別訪問支援として、管理監督者向けのメンタルヘルス教育を無料で行っているところがあります。部下の不調への気づき方を管理職研修に入れたいときは、地域のセンターに問い合わせてみましょう。
ハラスメント研修が「意味ない」で終わらない工夫
「研修をしても何も変わらない」という声は、研修が一度きりで、職場の実際とつながっていないときに出やすくなります。一方で、厚生労働省の令和5年度の実態調査では、過去3年間にパワハラを受けた経験がある労働者は19.3%、顧客等からの著しい迷惑行為は10.8%と、ハラスメントは今も身近な問題です。研修を日々の行動に結びつけるための工夫を紹介します。
年1回に加えて、入社時と昇進時にも
研修の頻度に法律上の決まりはありませんが、全社員向けを年1回、あわせて入社時と管理職への昇進時に行うと、新しく加わった人にも伝わります。法改正があった年は、その内容を必ず足しておきましょう。
事例は自社の業務に寄せる
一般的な事例だけだと「うちには関係ない」と受け止められがちです。自社の業務で起こりそうな場面に置き換え、実際の相談事例を使うときは個人が特定されないよう必ず加工します。
「指導できなくなる」不安に答える
管理職研修で禁止事項ばかりを並べると、「もう部下を注意できない」と受け止められることがあります。指針のとおり、業務上必要かつ相当な範囲の指導はパワハラではないことを示し、言い換えの例をセットで伝えると、萎縮を防げます。
研修の後に「相談できる先」を示す
研修で意識が高まると、「あれはハラスメントだったのでは」と気づく人も出てきます。最後に相談窓口を改めて示し、社内に話しにくい人のための外部の相談先も用意しておきましょう。
研修の前後で職場の状態を比べる
受講後アンケートの満足度だけでは、職場が変わったかは分かりません。相談件数の推移や、職場の状態に関する無記名のアンケートを前後で比べると、次に手を打つべき部署が見えてきます。
ココロチェックで、研修の後の「相談できる職場」を支える
ハラスメント研修は、社員が「おかしい」と気づき、声を上げられるようにするための入り口です。大切なのは、その声を受け止める仕組みと、職場の変化を確かめる手段をあわせて持っておくことです。
ココロチェックは、産業保健の担当者がいない会社のための、法人向けメンタルヘルスサービスです。組織の状態を「測る」ところから、社員が専門家に相談して「癒す」ところまでを、一つのサービスで支えます。研修そのものではなく、研修の前後に必要になる部分を受け持ちます。
- 組織の状態を測る:設問に答えるだけで、組織の状態と部署ごとの傾向がわかる組織診断を無料で用意しています。研修の重点を決める前の現状把握や、研修後の変化の確認に使えます
- 社員の相談先になる:公認心理師・臨床心理士などの専門家に、オンラインで1回30分から相談できます。ハラスメントやカスハラで傷ついた社員が、社内の窓口とは別に話せる先になります
- 人事に個人の情報は渡さない:会社が見られるのは組織単位の傾向だけで、誰が相談したかは本人の同意なく伝わりません
研修の前に部署ごとの状態を見ておけば、どの部署にどんな内容を厚めに届けるかを決めやすくなります。まずは無料の組織診断で、自社の職場の状態を確かめるところから始めてみませんか。
研修の重点を決める前に、無料で組織診断
設問に答えるだけで、部署ごとの状態がわかります。研修の前後に使えば、職場の変化を比べる材料になります。
ハラスメント研修のよくある質問
最後に、ハラスメント研修について、人事・総務のご担当者からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. ハラスメント研修は法律で義務づけられていますか?
研修の実施は、労働施策総合推進法などで「努めなければならない」とされる努力義務です。一方、方針の周知・啓発や相談体制の整備などの防止措置は義務で、厚生労働省の指針は周知・啓発の方法の例として研修を挙げています。研修をしない場合は、ほかの方法で全社員に確実に周知する必要があります。
Q. ハラスメント研修は年何回行えばよいですか?
回数の決まりはありません。全社員向けを年1回、あわせて入社時と管理職への昇進時に行うのが一つの目安です。社内でハラスメントが起きた後は、再発防止として改めて実施しましょう。受け入れている派遣社員も、派遣先として研修の対象に含めます。
Q. 管理職と一般社員で、ハラスメント研修の内容は分けるべきですか?
分けることをおすすめします。管理職には、指導とパワハラの線引き、部下から相談を受けたときの初動、カスハラ発生時の引き継ぎを厚めに伝えます。一般社員には、定義と相談先、自分が加害者にならないための注意点を中心にします。
Q. カスハラ研修では何を教えればよいですか?
会社の方針に加えて、正当なクレームとの線引き、対応を打ち切る目安、上司への引き継ぎ方、記録の残し方、悪質な場合の対処、被害後の相談先を伝えます。自社で起こりやすい場面のロールプレイも入れましょう。
Q. 小さな会社でも無料で使えるハラスメント研修の資料はありますか?
厚生労働省の「あかるい職場応援団」で、管理職向け・労働者向けの研修資料(PowerPoint)、研修動画、カスハラ対策のマニュアルなどが無料で公開されています。出典の明記が条件です。
まとめ:ハラスメント研修は義務化を機に「対象別」に見直す
ハラスメント研修について、要点を振り返ります。
- ハラスメント研修の実施は努力義務だが、指針では措置義務である周知・啓発の代表的な方法とされ、2026年10月からはカスハラと就活セクハラの内容も加えておきたい
- 研修の内容は、全員共通の土台に、管理職(指導の線引きと相談の初動)、一般社員(加害・被害の防止と相談先)、相談窓口担当者向けの内容を足して組む
- 厚生労働省「あかるい職場応援団」の無料の研修資料や動画を使えば、小さな会社でも研修は始められる。研修後の相談先と、職場の変化を確かめる手段もあわせて用意する
ハラスメント研修は、一度やって終わりではなく、方針を伝え続け、社員が安心して声を上げられる職場をつくるための取り組みです。研修を含めた予防の取り組みは、会社が負う安全配慮義務とメンタル不調で問われる責任を果たすうえでの土台にもなります。
研修の効果は、受講した社員の側の変化で確かめるのが確実です。
研修の効果を、社員の状態で確かめる
無料の組織診断で、部署ごとの状態を研修の前後で比べられます。会社に届くのは組織単位の傾向だけで、個人は特定されません。
